隷属的ユーザーでは意味がない

「Ohmae@workビル」内にある「ビジネス・ブレークスルー」のスタジオ。

「ネットは若い世代の世界」という言い方をする人がいるが、私は違うと思う。

ひところ、デジタル・ディバイド(デジタルの分かれ目、デジタル格差、情報格差)という言葉が流行った。コンピュータやネットワークを利用できる人とできない人の情報格差や経済格差という南北問題的な使われ方もするが、もうひとつ、デジタルを使いこなせる人と使いこなせない人、ITスキルのある人、ない人の格差という意味合いもある。

デジタルという奔流のこちら側と向こう側を分かつのは年齢ではない。興味、関心である。日本の改革のためにこれを何とか使いこなしたいという情熱だけで、私はデジタルの世界に分け入ったのだ。

まず必要なのは自分がユーザーになること。ただし、隷属的に使っているだけではティーンエイジャーのスマホと同じで意味がない。「コイツを使って何か作ってやろう」「何かやってやろう」という意識が大事である。私は放送局を作ってみた。

私がBBT(ビジネス・ブレイクスルー)を立ち上げたのは1998年。同年月からCS放送のスカイパーフェクTV(現スカパー!プレミアムサービス)のCh757で「大前研一ライブ」(初回放送 日曜日20~22時)を放送してきたが、開設初日からライブ放送中にネットで質問を受け付けて、それを観ながら私が何の準備もなくアドリブで回答するというシステムを採用している。世界初の双方向テレビである。

今でこそ各テレビ局もツイッターやフェイスブックを使って視聴者の反応をライブ放送に取り込んでいるが、当時としては画期的だった。

たとえばフィル・ナイト(ナイキ創業者)やジョン・チェンバース(シスコ・システムズCEO)がゲストに来るときに、「来週はここにジョン・チェンバース氏がきます。チェンバース氏に対する質問を送っておいてください」というと質問が山のようにくる。チェンバース氏がライブで私と話をしているときにも質問がくる。嫌な質問でも私の質問ではないから、「This person asks you this question」とか何とか言って平気でぶつける。向こうも怒りようがないから、嫌々でも答えてくれるという寸法だ。