政策立案の学校
「平成維新の会」の活動をしているとき、ボランティアで応援にきてくれていた人たちから、「自分たちにも政策の作り方を教えて欲しい」という要望があった。
平成維新の会は「生活者主権の国つくり」を目指した政策提言型の市民運動であり、自ら政治はやらない。政治家の真贋鑑定をして、選挙では我々の政策を実現してくれる候補者を応援していこうというスタンスだ。しかし会が提言する政策はほとんど私一人で作っていて、運動体として政策立案能力があるわけではなかった。
そこで1994年に「一新塾」という政策塾を立ち上げた。赤坂のビルに40~50人が受講できるようなスペースを確保して、政策の講義やワークショップを始めたのである。政治家、官僚、公務員、ビジネスマン、OL、起業家、学生、主婦……多様な分野から問題意識の高い人たちが集まってきた。
当初は東京都議会議員を養成する目的もあったが、私が95年の都知事選に惨敗した後はもっと幅広い意味で、市民セクターの人材育成を謳うようになった。言うなれば、「啓発された市民」の育成である。
ところが塾生の中から次第に政治家を目指して、選挙に立候補する人が出てくる。あるとき、塾の卒業生が統一地方選に立候補するからと言って私と握手した記念写真を撮りたいと大勢で押しかけてきた。選挙のパンフレット用に使う、というのだ。
政策提言どころか、握手の専門家みたいなことになって、これではやっていられないと思うようになった。
選挙がかかわってくると途端に生臭くなってくる。「握手してもらったのに、応援してもらえなかった」とか(卒業生だから握手しているのである!)、「同じ塾生なのに、大前さんはあっちの陣営を応援している」とか、知らないうちにいろいろ生臭いことが起こるのだ。