公立高校の入試の合否判定で実技4教科に比重を置く傾向が高まっている。東京大学教育学部卒の学習塾経営者・清水章弘さんは「せっかく主要5教科で高得点なのに、実技教科の成績や学校の振る舞いの影響で志望校のランクを下げざるを得ないケースも少なくない」という――。

実技4教科が10倍の比重の都道府県も!

高校入試(一般入試)は、学力検査(英数国理社)と調査書(内申書)が主な選抜材料になります。学科の点数と同じく、合否を大きく左右するのが内申点(調査書点)ですが、これは都道府県によって計算方法が大きく異なります。

主要5教科と実技4教科(音楽・美術・保健体育、技術・家庭)の評価割合は一律ではなく、特に実技4教科の成績を重視する制度が多くの地域で採用されています。

全国47都道府県の制度を精査した結果、実技4教科の評定を主要5教科の2倍として計算する都道府県が10以上もあります。例えば、東京都や宮城県、秋田県などでは、実技科目の評定がそのまま2倍で内申点に加算されます。また、鹿児島県では10倍の比重をかけられています。

このため、受験や保護者のみなさんは、居住地域や志望校の制度を確認し、定期テスト対策だけでなく、実技科目も5教科と同等、あるいはそれ以上に重要であるという認識を持ち、日々の授業や提出物に真剣に取り組むことが志望校合格への鍵となります。

文科省が推奨する「新しい学力観」

近年、公立高校入試において実技4教科の比重が高まっているのは、「知識の活用」と「多面的な資質・能力の評価」を重視する文部科学省の方針と社会的な要請が背景にあります。

文部科学省は、2020年度から全面実施された新しい学習指導要領において、育成を目指す資質・能力を「3つの柱」として再定義しました。これは、単に知識を覚えるだけでなく、それを活用する力や、主体的に学ぶ態度を評価する「新しい学力観」に基づくものです。

実技4教科は、美術の制作、体育の実践、技術の設計など、座学の5教科では評価しにくい「思考力・判断力・表現力」や「主体的に学習に取り組む態度」を具体的に評価するのに極めて有効です。内申点の比重を高めることで、生徒が全教科の学習に偏りなく取り組むことを促しています。

また変化の大きい時代において、企業や社会は、既知の知識を効率良く処理する人材よりも、協働性、創造性、問題解決能力を持つ人材を求めています。実技教科でのチーム活動や創意工夫のプロセスは、これらの非認知能力を評価するのに適しており、高校入試の段階から生徒の多様な能力を測る必要性が高まっています。

実技4教科の重要度は、今後も継続して高い水準で維持されるか、さらに高まる傾向にあると考えられます。大学入試改革と同様に、高校入試も学力検査だけでなく、調査書の内容や面接、特色検査などを重視する多角的・総合的な評価へと移行しています。実技教科での高い評価や、特別活動の記録が合否に占める割合が増加する傾向は今後も強まるでしょう。