一都三県に人が集まるのは「幸せになる」ため

平均の最低の5.79と最大6.35の差は0.56あり、全体の標準偏差が2.11であることを考えれば、偏差値換算で2.7の違いとなり小さな差ではない。そして、もちろんこの差は統計的に有意だ。

この傾向は、未婚女性だけのものではないが、一都三県に人口が集まる一つの背景になっていると言えるだろう。

これは、個々人が意識しているかどうかは別として、一都三県や福岡市等の政令市に人が集まってくるのは、一人一人が自分の可能性を信じて、幸せになろうとしている、ということだ。

だとすれば、個々人の意思に反して地方移住を勧めることは倫理的に問題があるはずだ。

「一都三県の中心部・政令市」とそれ以外では生活スタイルが違う

地方と一都三県の各自治体や政令市では日常の生活スタイルも大きく異なる。

地方では日常の移動手段はクルマが中心だが、一都三県の多くの場所では電車を中心とする公共交通機関の比重が極めて大きい。

図表3は、筆者の2022年の論考「テクノロジーを地域の暮らしに溶け込ませるために」(人工知能学会誌, Vol.37No.4)に掲載した図を一部加工したものだ。

【図表3】「日常の交通手段に車を使っている率」と「よく飲みに行く率」
【図表4】「大卒率」と「テレワーク実施率」

図を見ればわかるように、一都三県は日常の交通手段がクルマである比率が非常に低く、一方でよく飲みに行く率が非常に高い。その傾向は特に東京23区で際立っている。

テレワークについても、一都三県と政令市は大卒率が高く、テレワーク率もそれなりにあるが(それでもせいぜい20%程度であり、テレワークは世の中全体でみれば特殊な働き方だ)、その他自治体では全く違う傾向になっている。

ここからわかることは、一都三県の特に中心部や政令市は多少傾向が似ているが、その他自治体の傾向は大きく異なる、ということだ。

ここまで日常の生活スタイルが異なると、移り住み、適応し、快適に、幸福感を感じながら暮らすことは思ったよりも簡単ではないかもしれない。

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