東京一極集中は本当に問題なのか。実際には何が起きているのか。麗澤大学工学部教授の宗健さんは「東京一極集中と言われるが、実態としては『首都圏一極集中』である。特に全国よりも比率が高いのが20~35歳女性だ。背景には大学が首都圏に集中していることがある」という――。
東京
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実態は「東京一極集中」ではなく「首都圏一極集中」

コロナ過中は、首都圏への人口流入が減少し、地方への人の流れが生まれる期待もあったが、結局、首都圏への人口集中の傾向は復活している。

論調としては、東京一極集中は是正すべき社会課題である、という主張が多いようだが、本当に東京一極集中はダメなのだろうか。

そして、そもそも東京一極集中とは何を指しているのだろうか。

図表1は、人口、世帯数、15歳未満子ども数、75歳以上人口、20~35歳未婚女性、大学数、大学生数、GDP、法人数について、東京都と埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県の一都三県のそれぞれの項目の全国の数値に対する比率を集計したものである。

人口、世帯数については令和2年国勢調査、大学数については学校基本調査、GDPについては県民経済計算、法人数については国税庁のデータをもとにしている。

【図表1】東京都と一都三県が人口などにおいて占める割合

この図を見ればすぐにわかるが、東京一極に集中しているわけではなく、東京都を含む一都三県、すなわち首都圏に集中しているのが実態だ。

東京都の人口比率は11.1%しかなく、最も比率が高い大学生数でも26.6%に過ぎない。確かに、大学数(17.8%)、大学生数(26.6%)、GDP(19.6%)は東京一極集中と言えなくも無いが、正確には首都圏一極集中と呼ぶべきだ。

全国のGDPに対して首都圏が占める比率は33.5%

この言葉の定義は結構重要な点で、議論の掛け違いの原因になっている。

実際、2024年8月7日の日本経済新聞の「『東京一極集中』深まる溝 全国知事会、都と地方論争」という記事では、東京都の小池百合子知事が人口問題に関する緊急宣言案に反発したこと、埼玉県、千葉県、神奈川県の各知事も「東京と他の道府県との財政力格差が拡大している」と指摘したことが報じられた。

集中しているのは東京だけではなく、埼玉県、千葉県、神奈川県を含む首都圏なのに、その首都圏のなかで東京都だけがやり玉に挙がるのは公平な議論とは言えないだろう。

そして、全国のGDPに対して首都圏が占める比率が33.5%と人口比率の29.3%よりも高いことは、企業や人口が集積していることで生産性が高いことを示唆している。

首都圏の人口を地方に分散させるときには、現在の生産性を維持することが前提になるが、それをどうやって実現できるのかは明らかではない。