都市部居住者の中には、ゴミゴミした都会を離れのどかな田舎へ移住することに憧れを抱く人が多い。だが、地方に住むことにはメリットだけがあるわけではない。10年前に神奈川県から東北のある県に移住した大学教員の榮田いくこさんの実体験や見聞きした現実を紹介しよう――。
田園風景
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世の中には移住を希望する人がたくさんいますが、移住先はどこがベストなのか。実家周辺がいいのか、自分の人生に無縁の場所がいいのか。今回は、大都市在住者が移住するにあたり、「壁」に感じる可能性が高いと思われることをランキング形式にし、移住考慮時に何を想定すべきかをご紹介しましょう。

第5位 「のどかすぎる」と最悪の場合、命を左右する可能性

日本に自治体がいくつ存在しているかご存じでしょうか。実はこれ、簡単に調べることができます。「e-Stat 政府統計の窓口」にアクセスし、ページ下のほうにある「市区町村名・コード」を選択し、「市区町村数を調べる」を選ぶだけ。2024年8月上旬現在、1724の市区町村が存在します(東京都の特別区23区を含む)。

筆者が首都圏から10年前に移り住んだ東北の県には40の市区町村があります。国土が南北に長い日本には実にたくさんの自治体があり、それぞれがそれぞれの特徴を持ちます。移住先をどこにするか決めるのはなかなか難しいでしょう。同じ都道府県にあっても人口数千人の自治体と20万人以上の中核市では、もっている機能が異なります。

生まれも育ちも大都会という方が地方移住を望むのであれば、最初はある程度の都市機能があるところのほうがなじみやすいはずです。

例えば、リタイア後の時間を地方でのんびり過ごしたいという方。年齢を重ねると医療の世話になることも増えますが、自宅の所在地が最新・高度な医療を受けられる病院(大学病院など)から遠い場合は通院が不便です。公共交通の整備が不十分であればなおさらでしょう。万が一、救急車を呼んだときも到着時間が長くなり、最悪のケースでは、それで命を落とすリスクが高くなってしまうかもしれません。初めての地方暮らしは「地方の都会」を選ぶことをお勧めします。

筆者は8年前に乳がん治療を経験しました。放射線治療は、約1カ月半程度、土日祝日以外毎日通院し、その後も術後5年経過までは3カ月に1度の通院が必要でした。幸い自宅から病院へのアクセスがよく体力的精神的な負担やストレスを小さくできました。この経験からも「がん診療連携拠点病院等」(厚生労働省)に掲載されているような施設に通院しやすい地区かどうかを、移住先の条件としてはいかがでしょうか。