河野太郎氏が突然の「180度変節」

9月下旬に予定されている自民党総裁選への出馬が有力視されていたデジタル大臣の河野太郎さん。自説の中核であった「脱原発」を掲げていては必要な推薦20人や投票時の議員票集めに不利になると思ったのか、突然「原子力発電の推進」を言い始めました。

理由としては、菅義偉政権で定めた2050年までの二酸化炭素の排出削減(カーボンニュートラル)の実現は、再生エネルギーの拡大だけでは無理ということ。それに、大量の電力需要が見込まれる生成AI(人工知能)やEVなど電気自動車向けの給電を考えると「原子力も必要」とのロジックに転換したのでしょう。君子豹変す。

ただ、今年3月には河野太郎さんが長年引っ張ってきた自然エネルギー財団が日本のエネルギー関連の政策議論を引っ掻き回し、2021年には国の重要なエネルギー政策の方針を定める「エネルギー基本計画」の策定では所轄大臣でもないのに説明に来た官僚を河野太郎さんが恫喝する騒ぎまで発生しました。

さすがに総裁選を前にしての突然の「180度変節」に驚いた関係者も多かったことでしょう。

「能動的サイバー防御」に関する有識者会議の第3回会合であいさつする河野デジタル相(左端)=2024年8月6日午後、首相官邸
写真提供=共同通信社
「能動的サイバー防御」に関する有識者会議の第3回会合であいさつする河野デジタル相(左端)=2024年8月6日午後、首相官邸

デジ庁の「ギブアップ」資料が公開され騒ぎに

その河野太郎さんは現職のデジタル大臣ですが、目下進めている国策であるガバメントクラウドと、関係省庁・自治体間のデータ連携を促進させる各種施策に関して、実質的に自治体データの標準化という大事な作業をギブアップする資料が公開され騒ぎになっています。

2024年6月下旬に実施されたデジタル庁内のデータ標準化関連の会議の議事要旨が7月31日にようやく公表されたのですが、そのデジタル庁対応方針の中身に「データ連携に関する課題は事業者間協議にて解決を行う」という内容が入っていたため、関係者は全員椅子から転げ落ちる勢いで衝撃が走ったのです。

デジタル庁内でも、調整がなお多難であるとして、データ標準化を「25年度末に設定されたリミットまでに実現するには時間がかかる旨、(河野太郎)大臣には説明してきた」。また、別の省庁幹部は「データ標準化が完了する前提で進めているガバメントクラウドが、このギブアップで実質的に死んだ」「国策として進めてきたガバメントクラウドほか国のデータ政策を、デジタル庁が潰したようなもの。河野大臣の責任はまぬがれ得ない」と手厳しいながらも当然の評価をしています。

どうしてこうなってしまったのでしょうか。