デジタル庁は大臣に「決断」を促すべき
さすがにこの経緯を見る限り、河野太郎さんはDXや国家的なシステムで利活用する国民や行政情報のデータ標準化についてまったく分かっておらず「無能」と叩かれても仕方ないでしょう。
マイナンバー制度の普及拡大や、ワクチン接種のような、前に進めればそれがそのまま国益や国民の利益になることであれば、パワハラでも何でもして推進させる能力は河野太郎さんにあるのだろうと思います。一方、データ標準化の場合は、重篤な利害関係が自治体や民間事業者相互に発生し、すべての自治体が一定のデータ標準に基づいて連携しているから全国的に関連データが流通させられるのだ、という基本を、どうも河野太郎さんは理解していないのでしょう。
デジタル庁も、幹部はさすがに状況や問題点をよく理解はしています。ただ河野太郎さんにどう話を上げていいかわからないという状況になっているようなので、そこは怒られても大声出されても決定権者であり上司大ボスでもある大臣に説明して決断を促すべきなのではないかなあと思います。
より俯瞰的にこの問題を見るならば、国家として、マイナンバー制度を促進して政府や行政をデータ化し、合理化を推進するというのは当然やるべきことです。また、政府や都道府県、自治体のIT関連発注を適正化したり、データの標準化を行ったりして調達のコストダウンを図り、技術を駆使しながら限りある税金・財源を適切に使っていくことは大事な大方針であることは間違いありません。
地方自治体の「情報化」が進まない根本原因
しかしながら、今回のデジタル庁のように河野太郎さんが問題の所在を理解しておらずデータ標準化作業を自治体にぶん投げてバラバラに策定させ、使い物にならないガバメントクラウドと高額の開発費を擁する自治体システムの再構築にカネを使い始めてしまうと話がおかしくなります。
また、今回ぶん投げられた自治体の側には、IT技術やシステム開発に詳しい地方自治体の職員がほとんどいない場合も多くあります。そればかりか、人口減少と財源の枯渇に伴って、日常的な自治体運営のためのマンパワーも足りず、データ標準化の策定どころではない自治体も少なくありません。
地方自治体の情報化が進まないのは、自前でシステムの仕様を切ることができる人材が少なく、出入りしているITベンダーなど事業者任せになって、そのベンダーの言いなりになってシステム投資額が決まってしまう、いわゆる「ベンダーロックイン」という現象があります。この事業者が乱立し、一度納入したシステムは稼働してしまえば別の事業者に切り替えることが困難なことから、いつまでも自治体はその事業者に情報化予算を吸い上げ続けられるという弊害は強く指摘されてきました。
他方で、事業者側も勝手知ったる自治体の仕事を進めることで合理化させている面もあるため、この「ベンダーロックイン」自体が本当に悪いことだけなのかという論点では賛否両論あります。その自治体と業者の関係をデジタル庁が音頭を取ってデータ標準化を断行することに価値があったはずが、それが河野太郎さんの無理解ゆえに進まなくなったのは自治体にとっては災害に近い問題を起こします。