本質的業務に手付かず情シス担当のジレンマ
「新規事業を一言で言えば、情報システム部門(以下情シス)の多様な業務の自動化・外注化サービスです」と、指揮を執る柏原氏は説明する。

ソニービズネットワークス株式会社 執行役員
法人向け光インターネット回線の営業部長を経て、ソニービズネットワークス株式会社の立ち上げメンバーとして2012年10月に参画。
「企業各社に、社内のIT基盤の運用・管理を担う情シスが置かれていますが、ITが得意でない社員からのPCに関する初歩的な質問など、ささいな問い合わせが絶えないといいます。情シス担当はその対応に追われて、本来やるべき業務が進まないという悩みを抱えています」(柏原氏、以下同)
DX推進が叫ばれる中、各社の情シスでは情報インフラの更新改善、セキュリティー対策、コンプライアンス戦略策定など、取り組まなければならない“攻め”の業務が山積みだ。が、実際にはシステム障害対応やヘルプデスクなどの“守り”の業務に忙殺されている。人員には限りがあり、中小企業では専任の情シス担当者がいないことも決して珍しくないという。
SBNの主力事業であるネットワーク関連事業、クラウド関連事業がいずれも情シスの攻めの業務向けだったのに対し、新規事業では情シスの守りの業務の負担軽減を目指す。
そのために新サービスカテゴリ「NURO Biz Assist」として、現時点で、以下の三つのサービスが提供・準備されている。

一つ目はPCのライフサイクル管理(LCM)のアウトソーシング「Assist PC LCM」だ。
企業にとって社用PCの管理は煩雑な業務である。これをSBNで代行していくため、「PC販売」と、各種設定や周辺機器との接続、アプリのインストールなど、企業ニーズに合わせてPCをセットする「キッティング」をサービスとして提供している。
さらに「保守」や「データ消去」などその他サービスの拡充も予定されている。企業はLCMの全工程をSBNに一任できるようになるのだ。
「今年10月にWindows10のサポートが終了します。それに合わせて高まると予想されるPC買い替え需要にも対応していきます」
二つ目は社内各部門から情シスへの問い合わせに対応する、生成AIを活用したチャットボットサービスだ。
「お客さまの社内ルールやナレッジベースを学習させることで、的確に問い合わせに対応できるようカスタマイズします。また、属人的になりがちな情シスから社内各部門へのサポートについての履歴をAIに蓄積しますので、例えば担当者が退職した場合でも、滞りなく各部門へのサポートを継続できるようにアシストしていきます。近日、公開を予定しています」
三つ目はSaaS管理サービスだ。
「当社ではSaaSを多数扱っていますが、お客さまからは『複数のSaaSを管理するのが大変』という声を伺っています。現在、これらを統合的に管理するためのサービスを開発中で、こちらも近日公開予定です」
同社では定期的にビジネスコンテストが実施され、さまざまな新規事業の提案が行われてきたという。チャレンジを推奨し、受け入れる土壌がある中で、社内のアイデアを実現するために創設されたのが、SI本部だ。
ネットワーク関連事業、クラウド関連事業という同社の主力2事業はいずれも順調で、業績も右肩上がりだが、さらなる成長を目指し、売り上げにおける“第3の柱”をつくることをSBNは目指している。今後は主力2事業によって培われた顧客基盤を生かし、まずはIT部門へのサービスを拡充していく。
営業力を核に顧客の課題をチームで解決
企業としてのSBNの強みは営業力にある。顧客企業ごとに担当営業がおり、営業がプレゼンテーションによりプロダクトの強みを提案し採用に導く。同社は傑出したSLG(Sales-Led Growth)企業なのだ。
営業力向上のため、自社のハイパフォーマーの行動を分析し、共通点を抽出して明文化、研修により共有するといった「セールス・イネーブルメント」の取り組みも行っている。高いコミュニケーション力を持つ優れた営業が顧客の課題をヒアリングし、初期の段階から企画やエンジニアといった異なる専門性を持つメンバーが一体となり、ITの力で解決していくというのが、同社のスタイルである。
「SBNは『光回線の会社』というイメージが強く、現時点でもネットワークや回線関係の相談は数多く寄せられています。今後はSBNの持つ多様なメソッドを活用し、お客さまの課題解決のため、より踏み込んだ提案とサポートの実現を目指します。『どんな相談事も、まずはSBNに聞いてみよう』と思っていただけるような体制を構築したいですね」
現在、SI本部には専任部員はほとんどおらず、営業や企画、開発などの各部門から希望者が業務に携わっている。新たなプロジェクトが始まる際には社内公募を行い、社員が集う仕組みだ。さまざまな部門から人員が集まることでナレッジの共有が進み、開発レベルもアップしたという。
「将来的には情シスだけでなく営業部など他部門のサポートが行える新サービスを投入したいです。当社はお客さまの経営課題に対して真摯に取り組み、共に解決していく、良きパートナーでありたいと考えています。お客さまの成長力を最大化するアシストを行い、日本経済全体の生産性を向上させていくことが私たちの願いです」
