高齢の親にいつまでも自分らしく、豊かに穏やかに暮らしてほしい――。そう考えたとき、プロによるサービスが受けられる施設への入所は有力な選択肢だ。そうした中、「介護状態だったのが劇的に回復した」「親に笑顔が戻った」など口コミで支持を広げているのがセコムグループのアライブメディケアが運営する介護付き有料老人ホームである。都内の城南・城西地域を中心に11カ所で展開されているホームでは何を重視し、どんな取り組みを行っているのか。安田雄太社長に聞いた。

基準の2倍の人員を配置し価値観の共有を重視

――親の将来や介護について、現役世代(子世代)に知っておいてほしいことはありますか。

【安田】ビジネスパーソンの皆さんの中には、「親の介護」も仕事のように自らで課題解決しようとする方がいます。しかし自分の親は「まだ大丈夫」と思っていても、専門家から見ると認知症などが進行しているケースも少なくないため、外部の力を活用する視点もぜひ持っていただきたいと思います。

また、高齢の方たちも生きる喜びや幸せの在り方は人それぞれ。年齢などでひとくくりにせず、自分の親が求めているもの、幸せに感じることを見極めるのは大切で、それが親御さんの自分らしさや尊厳を守ることになります。

――アライブメディケアのホームでは、個々のニーズや希望に対応するケアをどう実現していますか。

安田雄太
安田雄太(やすだ・ゆうた)
株式会社アライブメディケア代表取締役社長
アライブメディケアに新卒で入社し、介護の現場で14年勤務。複数のホームでホーム長も務める。その後、本部へ異動して10年勤務し、2021年に社長就任。

【安田】まず重視しているのが充実した人員体制です。国の基準が「入居者3人に対しスタッフ1人」であるところ、当社は2倍の人員を配置しています。ご入居者の状態をきめ細かく把握するにはスタッフにある程度の余裕が必要で、それが「自分のことを分かってくれている」というご入居者の安心感にもつながります。そのため人員面には、経営資源を最大限投入しています。

ただし人員の数だけを確保しても質の高い個別ケアは実践できません。併せて重要なのがスタッフ全体でのケア方針や価値観の共有です。そこで私たちは、倫理的考察と科学的理論からなる「アライブケアエシクス」を設け、行動指針としています。このケアの倫理を基盤とした「自立支援ケア」と「認知症ケア」こそが私たちの特徴であり、ご家族からも高い評価を頂いています。

「年だから仕方ない」とは決して考えない

――「自立支援ケア」において、どのようなことを重視していますか。

【安田】強く意識しているのはエイジズムの排除です。私たちは「年だから仕方ない」とは決して考えません。実際ホームでは、食事や運動、排せつなど基本ケアを徹底することで長年寝たきりだった方が歩き始めたり、普段は車椅子を利用していた方がリハビリに励み、プライベートジェットの旅を実現したり、といった例が多くあります。「まるで奇跡」とも言われますが、それはご本人が本来持っていた力が引き出された結果に他なりません。

「減薬」も具体的な成果です。高齢になると10種以上の薬を服用している人も珍しくありませんが、多剤併用は転倒など有害事象につながり得る。そこで私たちは、外部の薬剤師や管理栄養士、主治医とも連携し、抗精神薬や眠剤、下剤の減薬を推進。1人当たりの平均薬剤数は4剤台となっています(※)

――先入観や固定観念が自立を妨げてしまうことがあるわけですね。

【安田】そのとおりです。私たちが力を入れている“旅行”も、「無理」と諦めてしまえば話は終わりですが、思い出の場所などを訪ねることを目標にすると、前向きになり、リハビリへの意欲が増す人がほとんどです。入居前、会話が途切れがちで、数日前の記憶も曖昧だった方が当ホームで認知症ケアを受け、ご家族らと旅行へ出掛けた例があります。旅行後、現地で撮影した写真をお見せすると、「あの時の写真だね」と笑顔でお話しになりました。認知症ケアや旅行によって、日常会話を楽しめるようになったのです。

旅行は自立に大きく貢献するため、トラベルドクター社と連携したオーダーメードの旅もご提供しています。

――「認知症ケア」では、順天堂大学の認知症疾患医療センターなどと連携し、先進的な取り組みを行っています。

【安田】MRIで脳を撮影して萎縮部位を特定するなどしています。それによって行動や心理状態を一定程度予測でき、適切な診断や薬剤調整が可能になるからです。ただここでも、大事にしているのは個別ケアの視点。仮に脳の状態が似ていても、その人の性格や好き嫌い、それまでの生き方などによってケアの方法は変わってきます。科学的な知見とお一人お一人のライフストーリーを掛け合わせることで、最適な対応を見いだすようにしています。認知症への対応はアライブメディケアにとっても重要事項であり、今後も治験への協力などさまざまな形で治療の進化に貢献していきたいと考えています。

閑静な住宅地に立地するアライブメディケアのホーム
閑静な住宅地に立地するアライブメディケアのホーム。「ホームは施設ではなく、住まいである」という信念の下、入居者一人一人に目と心が行き届く、小規模なホームづくりにこだわっている。

ウェルビーイング経営が質の高い個別ケアの土台に

――人材関連の施策を教えてください。

【安田】「スタッフが幸せであってこそ、ご入居者を幸せにできる」との考えの下、ウェルビーイング経営を推進しています。「幸福学」の第一人者である武蔵野大学ウェルビーイング学部長の前野隆司教授を顧問に招き、社内研修などを行いながら、仕事の成果が幸福の軸で語られる組織を目指しています。

人材確保の面ではインド政府と連携し、インドの優秀な人材を当社が採用、育成する取り組みを始めています。当社はこれまでも外国人人材を採用しており、入居者満足度の高さは調査で確認済みです。介護業界の人材不足が深刻化する中、海外との連携は課題解決に向けた大事な挑戦だと思っています。

――親の将来について真剣に考えたいという人へメッセージをお願いします。

【安田】ご入居者のご家族から「親との関係性が改善した」「自分たちが親の可能性を排除していたのかも」といった言葉をよくお聞きします。親御さんがいざ介護状態になると、どうしても慌ててしまいます。お話ししたとおり幸せの在り方は人それぞれですから、自分の親にとって何が重要なのか、事前に考えておくことがとても大切。それが親御さんとご家族が共に笑顔でいるための第一歩になるはずです。

※2024年1月時点での全ホームでの1人当たりの薬剤数。

六つの基本ケアを徹底しご入居者の主体性を引き出す

数週間で心身の状態が大きく変化

前島健司(まえじま・けんじ)
前島健司(まえじま・けんじ)
株式会社アライブメディケア入居相談室 室長

入所前、鏡の前に立っても自分と目が合わず、背中もすっかり曲がってしまっていた方が、1週間後、自分で髪の毛をとかし、服装も整えるように――。病院で鼻からチューブを挿して栄養剤を注入していた方が、数週間で通常の食事を口から食べられるように――。

私たちのホームには、そうしたご入居者がたくさんいらっしゃいます。それを支えているのは、「水分」「食事」「運動」「減薬」「睡眠」「排せつ」の六つの基本ケア。介護福祉士やケアマネジャー、看護師などから成る社内のケアサービス室とも情報交換しながら、基本ケアの中身を細かく調整して、個別ケアを提供しています。小さくても自身に変化が見られると、皆さんの中に主体性が生まれてくる。すると心身の状態は大きく改善します。

元気になってご自宅に帰られる方も

一度ホームに入ると、自宅には戻れない。そうしたイメージから、ぎりぎりまでご家族が介護をされているケースは少なくありません。しかし、私たちのホームでは元気になってご自宅に帰られる方も多くいらっしゃいます。介護疲れなどが原因で、ご家族の関係が変化してしまうこともあります。アライブメディケアのホームでは、体験入居なども行っていますから、ぜひご相談ください。

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