地方から若者が出て行くのは、仕事が無いからだけではない
地方創生の議論では、地方から若者が出ていくのは、仕事がないからだ、だから地方に仕事を作れば良い、という主張がある。
しかし、仕事があればそれだけで若者を地方に留められるかというと、そう簡単でもなさそうだ。
仕事といっても、あるかないかだけではなく、その内容にもよる。首都圏に多いホワイトカラーやクリエイティブな仕事を一定規模で地方に作り出すことはやはり難易度が高いだろう。
さらに、仕事だけではなく生活環境の違いも大きい。
下の図表2は、筆者が企画、設計、分析を行っている「いい部屋ネット 街の住みここちランキング」の個票データの居住満足度と居住満足度を構成する8個の因子について、首都圏の東京23区と政令市、中核市、その他に分けて集計したものだ。
数値は分かりやすいように首都圏(東京23区と政令市)を100とする指数としている。
結果を見ると、首都圏と政令市はそこまで大きな格差はないが、中核市、その他市、町村と人口規模が小さくなるに従って、各項目の数値が低くなっていくのがわかる。
特に「交通利便性」は首都圏の100に対して町村は15と非常に低い。
「適度な距離感のある人間関係」を求めている
これらの因子と居住満足度の関係を分析してみると、影響が大きいのは、「生活利便性」と「親しみやすさ」で、「親しみやすさ」とは簡単に言えば適度な距離感のある人間関係のことで、首都圏の100に対して町村では65と低くなっている。
この「親しみやすさ」の中身は、「気取らない親しみやすさ」「地元出身でない人のなじみやすさ」「地域の繋がり」「近所付き合いなどが煩わしくないこと」「地域のイベントやお祭りなど」といった項目を含んでおり、例えば、若い女性が誰かと一緒にクルマに乗っていても、「昨日のあの人は誰?」などと詮索されないような、負担感の少ない人間関係のことだ。
筆者も福岡県の小さな街で育ったからよくわかるが、地方の小さな街では、人間関係は小学校以来の固定化されたもので流動性がほとんどない。
こうした地方のコミュニティのあり方も地方から若者が出ていく要因になっているのだ。