首都直下型の地震が起きた場合、東京はどのような被害を受けるのか。京都大学名誉教授の鎌田浩毅さんは「最大で2万3000人の被害者が死亡し、そのうちの1万6000人が火災で死亡するという試算が出ている。地震による火災によって、最大で200メートルの“火災旋風”が発生する恐れがあり、そうなれば消火活動は実質的に不可能となってしまう」という――。(第1回)

※本稿は、鎌田浩毅『M9地震に備えよ 南海トラフ・九州・北海道』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

火災で煙の上がる都市のイメージ
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関東大震災が起きると、1万6000人が火災で亡くなる

日本はこれまで様々な大震災を経験してきたが、被害の内容は地震ごとに大きく異なる。1923年の関東大震災では犠牲者の9割が地震後に起きた火災で亡くなった。また、阪神・淡路大震災では8割が地震直後に起きた建物の倒壊によって亡くなり、東日本大震災では92%が巨大津波による溺死だった。

大都市を襲う直下型地震での最大の問題は、建物倒壊など直接の被害に留まらず、火災など巨大災害を引き起こす点にある。大正時代と比べると現在の方が、複合型の危険性ははるかに大きい。国の中央防災会議は、首都直下地震が冬の風の強い日(風速8m/s)の場合、夕方6時に都心南部を震源として発生する場合を最悪のケースと考え被害想定を行った。

それによれば犠牲者は最大2万3000人、全壊または焼失する建物は61万棟にのぼると想定し、経済的損失は間接的な被害も合わせると142兆円にもなるとしている。また、首都直下地震の犠牲者総数の7割に当たる1万6000人が火災による死亡と試算した(*1)

減災の第一のポイントは、直下型地震の後に必ず起きる大規模な火災への対策である。高層ビルが多い都心部では、ビル風によって竜巻状の炎をともなう火災が次々と発生し、地震以上の犠牲者を出す危険性がある。

(注)
(*1)。国の中央防災会議は首都圏でM7.3の直下型地震が起きたときに1万1000人の揺れによる死者、1万6000人の火災による死者、全焼家屋17万5000棟、焼失家屋41万2000棟、そして建物等の直接被害47兆円および生産・サービス低下の被害95兆円の経済的被害がそれぞれ出ると想定している。