被災後はどのような行動を心がけるべきか

首都直下地震の発生後に、約800万人と予想される「帰宅困難者」を減らす工夫が喫緊の課題なのである。ちなみに東日本大震災時に震度5強を被った東京周辺では、515万人の帰宅困難者が出ている。これに対しては別の対策が考えられている。

多くの企業や官庁は数日間は従業員が帰らなくても生き延びられるよう食料と水と簡易トイレを備蓄している。家族に安全だという一報だけ入れ、職場の建物に数日間留まるのが望ましい。助かった人は、職場のけがをした人を助けることもできる。よって、地震に遭ったときには、まず助かったことを家族や知人に伝える。

震災直後には何百万人という人が一斉に電話をかけるため、通信回線のパンク(いわゆる輻輳ふくそう)が起きる。これを避けるには、遠くの第三者に電話して安全を伝えるとよい。田舎の両親でも共通の知人でも、平常時に情報の迂回うかい路を用意しておきたい。

また地震をやり過ごした後でもスマホの電池切れは何としても避けなければならない。数日間は電気がストップし、まったく充電できないことを予想しておこう。乾電池で充電する器具を用意するのもよいが、一番確実なのは毎朝充電が完了したスマホを持って家を出ることを心がけることだ。

約300万人が避難所生活を余儀なくされる

首都直下地震では地震直後に約720万人が避難し、そのうち290万人が避難所生活を余儀なくされると試算されている。ちなみに、阪神・淡路大震災では32万人、また東日本大震災は47万人が近くの学校などに避難し急場を凌いだ。

避難所に指定された小学校の看板
写真=iStock.com/Yusuke Ide
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一方、首都直下地震の290万人や南海トラフ巨大地震の460万人のように、これから起きる巨大災害では桁違いの避難者数が予想されている。収容力を超えた避難所では、水や食料だけでなく医薬品など全ての物資が不足する。そして当初予定していた体育館や教室だけではなく、避難所の周辺も避難者で溢れかえる可能性がある。

さらに震度7の地震が収まった後のライフラインや交通への影響も甚大である。上下水道や電気の停止が長期化し、一般道では激しい交通渋滞が数週間ほど継続する。鉄道は一週間から一カ月程度にわたり運行できないだろう。加えて食料や水などの生活物資とガソリンや灯油などの燃料が不足した非常時が長期間続くことを想定しなければならない。

百年前に発生した関東大震災以後、首都圏では人とモノ、そして資本の一極集中が加速しさらに留まるところを知らない。関東大震災で得た最大の教訓は、大都市で地震が発生すると必ず火災が広がるという点であった。さらに木密地域では耐震補強を施すことで倒壊を最小限に防ぐ必要があり、沖積層の軟弱地盤地域やウォーターフロントでは、長周期地震動に対する建造物の対策が喫緊の課題となる。