「東京」ではなく「首都圏」に人口が集中している
日本全体の人口が減少するなか、地方創生のためには東京一極集中を是正しなければならないという論調は多い。
しかし、そもそも集中しているのは「東京」ではなく「首都圏」であることが見過ごされている。
例えば、国土交通省の資料によれば、東京都の人口は全国の10.8%に過ぎず、これは主要先進国と比較しても、パリの18.2%、ロンドンの13.4%よりも低い。しかし、東京都ではなく一都三県でみれば人口比率は28.8%と49.6%が集中しているソウル都市圏に次いで高い集中率となる。
特に大学生数は、首都圏に全国の40.7%が集中しており、若年層が首都圏に集まる大きな要因になっている。文科省の資料によれば、そもそも道府県内で大学進学者の全員を収容できるだけの大学定員を確保しているのは、東京都と京都府だけであり、大学に行こうと思えば、東京か京都に行かざるを得ないのが現状だ。なお、東京都の大学に進学したからといって全員が東京都に住むわけではないのは当然だ。
このように、そもそも「東京一極集中」という言葉が誤解を生む余地があり、せめて「東京圏一極集中」と呼ぶべきで、本稿では、より正確な実態を表す「首都圏一極集中」という言葉を使う。
住んだ経験はないけれど「東京は住みにくい」と回答
そもそも首都圏一極集中を是正しなければならない、という論調の背景には、「東京はごみごみしていて人が多く住みにくいのに、仕事があるから仕方なく住んでいる」というイメージがあるようだ。
実態はどうかというと、筆者が企画、設計、分析を行っている「いい部屋ネット 街の住みここちランキング特別集計 街の魅力度ランキング2023<都道府県版>」の結果からは違うイメージが浮かび上がる。
この調査は日本全国の約18万人から回答を得た大規模なもので、回答者の居住地への評価と、ランダムに表示された居住地以外の都道府県に対するイメージを集計してランキングにしたものだ。
首都圏の一都三県に関する主な項目の順位は以下の通りになっている。
イメージ通りに、東京都に対する非居住者評価は、「自然が豊か」が最下位の47位、「住みやすそう」もブービーの46位だが、「住んだことがある」「仕事で行ったことがある」「メディアでよく見る」は1位となっている。
「住んだことがある」「仕事で行ったことがある」が1位とは言っても、その比率は22%に過ぎず8割弱の回答者は住んだ経験がないのに「住みにくい」と思っている。