「東京は住みにくい」はメディアの作ったイメージ
この9割という数字ではなく、待機児童数の絶対数だけを中心に報道する姿勢はとても科学的態度とは言えない。
そして、こども家庭庁の資料によれば、2024年4月時点の待機児童数は全国でわずか2567人と、2016年のほぼ1/10にまで減少しており、横浜市の待機児童はわずかに5人、世田谷区の待機児童数はわずか58名となっている。
しかし、あれだけ問題だったはずの待機児童が激減したという報道はあまりなされない。
このように、東京は住みにくいというのは、おそらく、長年にわたるメディア報道等によって作られたイメージなのだ。
その構図はおそらく、地方出身者が上京して来て首都圏のどこかで不満なく暮らしながら、(首都圏全体ではなく)東京はひどいところだぞ、これからは地方創生だ、と意識高く議論している、というものだろう。
消滅可能性自治体から引っ越すと幸福度が上がる
「いい部屋ネット 街の住みここちランキング2023<総評レポート②>」では、消滅可能性自治体出身者の属性別の幸福度を集計しており、消滅可能性自治体に住み続けている場合に比べて、別の場所で暮らしている場合のほうが幸福度が高まる傾向があることがわかっている。
幸福度の上昇は、特に未婚の子どもなし女性で顕著だが、20~35歳未婚子どもなし女性について、消滅可能性自治体、その他の3つの組み合わせで集計したのが下表である。
幸福度は、非常に幸福だと思う場合は10、非常に不幸だと思う場合は1とする10段階評価の平均で、全体の平均は6.52、標準偏差は2.11である。
最も幸福度が低いのは、消滅可能性自治体出身でそのまま消滅可能性自治体に住んでいる場合で、もっとも幸福度が高いのは、その他自治体出身者が一都三県に住んでいる場合である。
消滅可能性自治体出身者に着目すると、そのまま消滅可能性自治体に居住している場合よりも、その他自治体か一都三県に移り住んだほうが幸福度が高くなっている。