DXに対応できる人材が足りていない
DX、デジタルトランスフォーメーションという言葉を聞いたことがある人は多いだろう。
DXとは、もともとはスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に「ITの浸透が、ひとびとの生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念を提示したのが初出とされている。
日本では、経済産業省が2018年に策定した「DX推進ガイドライン(現:デジタルガバナンス・コード2.0)」で「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されている。
しかし、こんな複雑な説明をしなくても、シンプルに言えば、DXとは「データとITを使いこなすこと」になるだろう。
ただし、DXというバズワードに企業が飛びついても、それに対応できる人材は少なく、データサイエンティストと呼ばれる職種では20代でも1000万円以上の年収が得られることも多くなっている。
大学教育でも、そうした社会のニーズに応えるべく、2017年の滋賀大学を始め、横浜市立大学、武蔵野大学、立正大学、一橋大学など多くの大学でデータサイエンス系の学部新設が相次いでいる。
戦後50年間は仕事のやり方は同じだった
こうした社会の大きな変化は、パソコンとインターネットと携帯電話ネットワークが大きな役割を果たしている。
スマホは、その延長にあり世界人口に対する普及率は7割程度と言われており、約80億の人口のうち56億人がスマホで繋がっていることになる。
これは人類史上でものすごい大きな変化で、ティム・オライリーが2005年に発表した「What Is Web 2.0」での「Web 2.0の本質が、集合知を利用して、ウェブを地球規模の脳に変えること」が実現しつつあるということだ。
さらに、ここにChatGPTのような生成系AIが急激な勢いで普及して、国内の利用者数も2024年末には2000万人近くになるといわれている(ICT総研「2024年度 生成AIサービス利用動向に関する調査」2024年8月30日)。
ただし、ここのような変化は実はここ20年くらいの話で、1945年の太平洋戦争終結から1995年くらいまでの50年間は、社会も仕事のやり方もあまり変化しなかった。
もちろん戦後の日本は高度経済成長で、物質的には豊かになったが、仕事といえば、計算はそろばん、書類は手書き、連絡は電話と手紙という時代が長く続いた。
だからこそ、理系の専門知識は製造業を中心に必要とされたが、文系の職業では何を学んだかはあまり重視されなかった。