必ずしも難しい数式を覚える必要はない

そしてデータサイエンスの素養があれば、世の中の様々な言説に対して慎重な態度を保つことができる。例えば、有名大学を出ても仕事ができない人がいる一方で、無名大学出身者でも仕事ができる人がいる、だからどこの大学を出たかは関係がない、という言説がある。これに対して、平均と分布の知識があれば、ある母集団の最大値が、別の母集団の最小値を上回ることはあり得るが、その確率はさまざまで、安易に一般化することはできない、と判断することができる。

データサイエンス以外でも最近では、生成系AIが普及してきているが、パソコンのように特別な操作方法を覚える必要はない。生成系AIを使いこなすにはちょっとしたコツもいるが、一番大切なのは、生成系AIに対して適切な命令(プロンプト)を与えることで、そのためには適切な日本語の運用能力が必要だ。

データサイエンスでも、実は、必ずしも難しい数式を覚える必要はあまりなく、データサイエンスに関連する様々な概念を日本語としてきちんと理解できていれば十分だ。

パソコンを操作する女性
写真=iStock.com/eclipse_images
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ITに関する基礎的能力を証明する「ITパスポート」

DXの時代だ、と言われて、じゃあどうすればいいのか。

その一つの答えが、「ITパスポートくらい取っておこうよ」ということだ。

ITパスポートとは、情報処理推進機構が運営している試験制度にある資格の一つで、ホームページには「iパスは、ITを利活用するすべての社会人・これから社会人となる学生が備えておくべき、ITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験です」と説明されている。

具体的内容としては、「新しい技術(AI、ビッグデータ、IoTなど)や新しい手法(アジャイルなど)の概要に関する知識をはじめ、経営全般(経営戦略、マーケティング、財務、法務など)の知識、IT(セキュリティ、ネットワークなど)の知識、プロジェクトマネジメントの知識など幅広い分野の総合的知識を問う試験です」と説明されている。

この説明の通り、パソコンの使い方やコンピュータの知識だけが問われる資格ではなく、マーケティングやプロジェクトマネジメントなどの経営全般の基礎知識も問われるのが特徴になっている。