宇宙はいったいどんな形をしているのか。その答えは、世界中の数学者を悩ませ続けた超難問が導いてくれる。NHKの知的エンターテインメント番組「笑わない数学」の放送内容を再構成した書籍より、「ポアンカレ予想」についての箇所を紹介する――。(第2回)

※本稿は、NHK「笑わない数学」制作班編『笑わない数学2』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

米研究所が出した「これが解けたら100万ドル」の問題とは

西暦2000年。アメリカのクレイ数学研究所が「7つの問題」を発表しました。これらは、数学の各分野において重要でありながら、未解決だった問題です。次の100年間で数学者たちが取り組むべき問題として、そして、歴史的にも重要な意味をもつと思われる問題として、選定されました。

クレイ研究所は、これらの問題の解決に1問につき100万ドルの懸賞金を賭け、「ミレニアム懸賞問題」と名付けました。以下が、その問題です。

ミレニアム懸賞問題
1.バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想(BSD予想)
2.ホッジ予想
3.ナヴィエ・ストークス方程式の解の存在と滑らかさ
4.P対NP問題
5.リーマン予想
6.ヤン・ミルズ方程式と質量ギャップ問題

それぞれの問題の解説は、残念ながらここではできません。しかし、先述のとおり、いずれも各分野において非常に重要な問題であり、それでいて未解決の問題たちです。もしどれか1つでも解けたら、あなたには100万ドルの賞金と、歴史に残る栄誉が与えられます。

ところで、先ほど「7つの問題」と書きました。しかし上には6つしかありません。残りの1つはどこへ行ったのでしょう?

実は、7つ目の問題は、すでに解決されています。

1904年にフランスの数学者アンリ・ポアンカレによって提起され、およそ100年後の2003年にロシアの数学者グリゴリ・ペレリマンによって解決された、文字どおりの「世紀の難問」。それが、ミレニアム懸賞問題の中で唯一解かれた問題、「ポアンカレ予想」です。

アンリ・ポアンカレ
アンリ・ポアンカレ(写真=CC-PD-Mark/Wikimedia Commons