マゼランの実証でOKとはならない
マゼランは地球が丸いことを実証した……本当でしょうか?
マゼランの業績は、間違いなく偉大です。彼らは人類史上初めて地球を一周し、多くの地理的発見を残しています。
ところが、ポアンカレは「マゼランの方法では地球が丸いことの証明にならない!」と考えたのです。
いったい、どういうことでしょう?
地球がもし丸いなら、マゼランたちの方法で地球を一周することができるでしょう。
しかし、例えば地球がドーナツ形だったとしても、マゼランたちは地球を一周できますよね?
では、どうすれば、地球の外に出ることなく、地球が丸いことを証明できるでしょうか?
ポアンカレは、こんな方法があると考えました。
まず、ものすごーく長ーいロープを用意します。そうですね、ざっと6~10万kmくらいあれば足りるでしょうか。
この一端をどこかにしっかりと結び付けます。そしてもう一端を持って船に乗り込み、マゼランたちのように世界一周の旅に出かけるのです。
一周して戻ってきたら、持って帰ったロープの端と、結び付けていたロープの端を手に持ちます。そして、それを力いっぱい引っ張ってください。すると何が起こるでしょう?
想像してみてください。あなたは今、地球をぐるりと一周する大きな輪を持っています。それを何日も、何年も、とにかく頑張って引っ張り続けるのです。
もし地球がドーナツ形なら
するとロープは、その航路がどんなに複雑なものだったとしても、地球が丸いなら、いつかあなたの手元にすべて戻ってくるはずですね(山やビルには引っかからないものとします)。
一方、地球がドーナツ形だと、航路によってはロープを回収できない場合があります。例えば、こんな風に一周した場合(図表2)。この場合、ロープを回収しようとしても、ロープが途中の穴を越えられず、回収できません(ロープは地球の表面を滑るようにしか移動できないと考えてください)。
もしくは、こんな風に一周して元に戻ってきた場合(図表3)はどうでしょうか? この場合もやはり、ロープは回収できませんね。
このように、地球が球のような丸い形でなかった場合、ロープは必ず回収できるとは限りません。したがって、もしどんな航路でも常にロープが回収できるならば……お見事、地球は丸いと言えるのです
ちなみに、歴史的には、地球が丸いことは月食によって証明されたと言われています。月食は月に地球の影が落ちる現象ですが、影の形が常に円であることから、地球が丸いとわかります(影が常に円になる図形は球しかないので)。