仕事のできる人は何をしているか。おくりバント社長でプロ営業師の高山洋平さんは「営業マンはやさしくなければいけない。そのためには街へ出て、幅広い情報や知識を得る必要がある。俺がいつもオフィスにいないのには、コンビニ、個室ビデオ、漫画喫茶、ファミレスといった街にいる『師匠』たちに学ぶ機会を逸するからだ。仕事なんてしている場合じゃない」という――。

※本稿は、高山洋平『ビジネス書を捨てよ、街へ出よう』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。

書店内で販売されている漫画の写真
写真=iStock.com/brunocoelhopt
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プロ営業師が毎日サボっているように見える理由

おくりバント社長の高山洋平さん
写真=著者提供
おくりバント社長の高山洋平さん

翌日の朝。開店直後のルノアール恵比寿東口店は、すでに半分の席が埋まっていた。

客のほとんどは、営業マンとおぼしきスーツ姿の中年男性だ。手帳を開いて外回りのアポイントを確認する人、商材の資料を手にプレゼンのシミュレーションをしている人、電話で上司に指示を仰いでいる人。みなそれぞれの戦いに向けて牙を研いでいる。

信頼する上司に見限られ、営業マンとして挫折した僕の目には、彼らの姿が眩しく映った。

そんな働く男たちとは対照的に、高山は目の前でノホホンとアイスコーヒーを飲んでいる。いつも通りふざけた服装で、テーブルには漫画『刃牙』。

なんて不誠実な態度なんだと、つい言葉が尖った。

「高山さん、本物の営業って何なんですか? 失礼ですけど、僕には高山さんが毎日サボっているようにしか見えませんよ」

返事によっては、今すぐアシスタントを辞めてやると思った。

「いいか……」

高山は動じる様子もなく、ゆっくりとストローから口を離す。

「確かに、君の言う通りだ。俺は毎日サボっている。真面目な君の感覚からすれば、許しがたい行為だろうな」

言いながら、ズボンのポケットからクシャクシャになったタバコを取り出した。火をつけ、深々と吸って一秒後、煙を勢いよく吐き出す。