※本稿は、高山洋平『ビジネス書を捨てよ、街へ出よう』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
上司の無茶ぶりを回避する“パワーワード”
僕とweb営業部の西久保さんは、会議室に移動した。
「まず、この『上司の理不尽な要求のかわし方は、夜の接客術に学べ』って……」
「ああ。以前、ある企業PRのチームで、長時間労働が常態化していてね。諸悪の根源は、大量の業務を定時直前にねじ込んでくる上司だった。メンバーは次々と餌食になり疲弊していき……」
「そんなチームで働きたくないですね」
「そうだろう? そして、とうとう高山君も標的になってしまった。しかし……」
西久保さんは、当時の高山と上司のやりとりを話してくれた。
悪徳上司A「おう、高山君。悪いが明日の朝イチまでに、5000人分の顧客データをエクセルにまとめといてくれ」
高山「仕事を与えていただき、ありがとうございます! ぜひやりたいです!」
悪徳上司A「頼もしいな、高山君!」
高山「その前に1本だけ電話をかけてもいいでしょうか?」
悪徳上司A「何だ? 面倒なクレーム対応じゃないだろうね?」
高山「実は今日、小学生の甥っ子が中学受験に備えて田舎から出てきてまして。うちに泊めてあげることになってるんです」
悪徳上司A「そうなのか。じゃあ、仕事で遅くなるから家の中で待っているように言ってあげなさい」(さすが悪徳上司。この程度では帰してくれない)
高山「いや、あいつ鍵持ってないんで、ドアの前で待たせておきますね」
悪徳上司A「えっ……」
高山「この分だと、5時間くらいかかりそうですが……。まあ大丈夫でしょう! 受験は明日ですけど、何の問題もありません! あ、ちなみに今晩、雨降るらしいですよ」
悪徳上司A「……もういいから、早く帰りなさい」
なるほど。断りにくい用事を回避するために“家族”というパワーワードはかなり効きそうだ。さらに“受験”や“天候の悪化”で畳みかけ、強度を強めるとは……。