静岡県・鈴木康友知事の就任から1カ月が経過した。これからリニア問題はどうなるのか。ジャーナリストの小林一哉さんは「鈴木知事は選挙戦で掲げた『県東部への医大誘致』の公約を『人口が減るから』という理由で早々に撤回した。このままでは『リニアもいらない』と言い出しかねない」という――。

「ボーリング調査の容認」は鈴木知事の手腕とは関係ない

静岡県の鈴木康友知事は、川勝平太前知事が一切合切を放り投げてしまったリニア問題についてはスピード感を持った対応を行い、県民から一定の評価を得ている。

前回の記事(「2年間進まなかったリニア問題」がわずか1カ月で解決…やはり川勝前知事の難癖は「オカルト主張」だった)でも触れたが、川勝氏が約2年にわたって妨害してきた「山梨県の調査ボーリング」を就任早々に容認した。ただ、これはそれほど難しい話ではない。川勝氏の主張がおかしかっただけだからだ。

この合意だけで、鈴木知事の政治手腕を評価するのは間違いである。

そんな鈴木知事は、公約に掲げた「幸福度日本一の静岡県の実現」に欠かせない「県東部地域の医大誘致」を早々に撤回してしまった。

医大誘致を撤回、「やります」ではなくなった鈴木知事
筆者撮影
医大誘致を撤回、「やります!」ではなくなった鈴木知事

「医大誘致」と言えば、川勝氏も公約に掲げたが、見事に失敗している。

川勝氏の失敗にもかかわらず、鈴木知事は「県東部地域の医大誘致」を約束した。これで、劣勢だった県東部、伊豆地域の人々は大いに期待して、支持に回った。自民党推薦候補との差は一気に縮まり、選挙戦の勝利を手中にした。

それなのに、その期待を早々と裏切ってしまった。静岡県民の一部から激しい怒りの声が上がっている。

なぜ「医大誘致」が「幸福度日本一」につながるのか

「幸福度日本一」はあいまいな概念であり、県民のほとんどが理解できていない、と軽く考えたようだ。しかし、その内容はそれほど難しいものではない。

「幸福度日本一」は「県東部の医大誘致の公約」と表裏一体である。

それなのに、鈴木知事は「(県東部地域の医大誘致は)可能性としてはゼロではないと思うが、よくよく状況を調べていくと、これからどんどん人口が減っていく中で、医師自体もマクロとしてはもう間もなく医師が余る。当然、地域的な偏在は残ると思うが、そういう時代に入ってくるので、なかなか医学部の新設はハードルが高い」などと医大誘致から逃げてしまった。

医大誘致が「幸福度日本一の実現」と一体であるとは、いったい、どういうことなのか、詳しく紹介したい。