「県民の声を聞いて幸福度を日本一にする」と答弁

6月25日の静岡県議会一般質問で、山本隆久県議(浜松市、無所属)が「幸福度の要因は、1つ目が経済的社会状況、2番目に心身の健康、3番目に家族や地域など社会における関係性と言われる。幸福とは経済状況よりも大切なものであるという考え方が広がっている」などとした上で、「鈴木知事が目指す『幸福度日本一』の真意と、どのような手法で取り組んでいくのかうかがいたい」とただした。

6月県議会で「幸福度日本一」を答弁する鈴木知事
筆者撮影
6月県議会で「幸福度日本一」を答弁する鈴木知事

鈴木知事は「『地域幸福度(ウェルビーイング)指標』を活用する。この指標は、客観的指標と主観的指標をバランスよく活用し、『暮らしやすさ』『幸福感』を意味する『ウェルビーイング』について、数値化・可視化する。国や浜松市などの自治体でも活用されている。県民の声をしっかりと聞きながら、県民幸福度日本一の静岡県に向け、取り組みを進めていく」などと答弁した。

何のことはない、「地域幸福度(ウェルビーイング)指標」とは、国のデジタル庁が唱えている。鈴木知事の答弁もその考えを踏襲、答弁内容もそれに沿っていた。

客観的指標とは、病院、大学、公園、道路など公共インフラ整備などを数値化したもの、主観的指標は住民たちの価値観をアンケート調査で明らかにしたものだ。

主観的指標であれば、みなばらばらだが、公共インフラを比べる客観的指標からは、幸福度がはっきりとわかる。

県西部の浜松市と東部の熱海市で平均寿命が約2歳も違う

鈴木知事は、浜松市長だった際、「地域幸福度(ウェルビーイング)指標」を基に、住民の行政需要を明らかにして、地域振興に取り組み、ある程度の成果を得たので自信を深めたのだろう。

ただ、浜松市の事情は、静岡県の他の地域事情とは全く違う。

その違いがいちばんわかるのは、「自治体の長生きランキング」である。

「自治体の長生きランキング」、すなわち、厚生労働省が5年に一度発表する「市区町村別生命表」を見れば、浜松市と他の地域との違いがはっきりとわかる。

最も新しい2020年度の全国市区町村別生命表を見てみよう。全国の平均寿命は男81.5歳、女87.6歳、静岡県では男81.6歳、女87.5歳である。静岡県平均は男女いずれも0.1歳の誤差で、全国平均にほぼ準じている。

しかし、市町村別に詳しく見れば、浜松市と他の地域の違いがはっきりとわかる。

浜松市は男82.2歳、女87.8歳で、いずれも全国、県を上回り、県内トップクラスの平均寿命である。

これに対して、熱海市は男80.3歳、女85.9歳で、男女いずれも県内最低である。

【図表】市区町村別平均寿命(静岡県・部分)
出典=厚生労働省「令和2年市区町村別生命表の概況

浜松市と熱海市と比較すると、熱海市は何と男女ともほぼ2歳も浜松市の平均寿命を下回ることになる。男女とも平均して2歳も長生きかどうかの違いはあまりに大きい。

この数値は2020年度だけの特殊事情ではなく、これまで2~3歳の違いでずっと同じ傾向が続いているのだ。