岸田文雄首相が「2037年までにリニア中央新幹線を全線開業させる目標を堅持する」と発言したことが波紋を呼んでいる。ジャーナリストの小林一哉さんは「岸田首相の発言には根拠がない。いたずらに期待を煽り、国民をばかにしている」という――。
リニア中央新幹線の早期開業に向け、建設促進期成同盟会に参加している知事らと面会する岸田首相(右から2人目)=2024年6月7日午後、首相官邸
写真提供=共同通信社
リニア中央新幹線の早期開業に向け、建設促進期成同盟会に参加している知事らと面会する岸田首相(右から2人目)=2024年6月7日午後、首相官邸

具体的な根拠もなく「2037年全線開業」と発言

岸田文雄首相は6月7日、着工が遅れているリニア中央新幹線の品川―大阪間の全線開業の時期について「2037年」を堅持することをリニア沿線都府県知事に表明した。

翌日8日の静岡新聞が「首相、リニア37年開業堅持 同盟会に伝達 JRを指導、支援」という大見出しの1面トップ記事でその内容を伝えたほか、「リニア『37年開業』堅持 品川―大阪 首相、沿線首長に表明」(日経新聞)、「首相『37年開業へ支援』」(中日新聞)など各紙とも全く同じ内容を報道した。

JR東海は昨年12月、静岡工区の未着工を理由に、品川―名古屋間の2027年開業を「2027年以降」とした上で、ことし3月に正式に2027年開業を断念した。

つまり、品川―名古屋間の2027年開業はなくなったが、「2037年」を目標とする品川―大阪間の全線開業の実現に向けて、政府が積極的な支援をすることを明らかにしたのだ。

川勝前知事の「同じ穴の狢」

6月7日に都内で開かれたリニア沿線都府県知事による建設促進期成同盟会総会で、自民党リニア特別委員会委員長から、岸田首相が全線開業の2037年目標を堅持することが紹介された。

そのあと、官邸を訪れた沿線知事と懇談した岸田首相は、2037年開業の堅持をJR東海に求める考えを示した。ただ、具体策についてひと言も言及しなかった。

6月21に閣議決定される「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)に盛り込むようだが、政府が具体的に何を根拠にこんな発言をしたのかさっぱりわからない。

どう考えても、JR東海を指導するだけでは、2037年全線開業などできるはずもないからだ。

それなのに、「2037年開業」実現をまじめに主張するのは、「2037年開業」を無責任に唱えていた静岡県の川勝平太前知事と同じ穴のムジナとなってしまうだろう。

いったい、どういうことなのか?