JR東海は「一括開業」を否定している

「2037年」がJR東海のリニア全線開業の目標なのかどうか、ことし1月静岡県で、大きな議論を呼んだ。

静岡県は2022年7月、リニア沿線知事による「期成同盟会」に10番目のリニア沿線県として加入した。その際、2027年の名古屋までの開業、2037年の大阪までの全線開業に賛同することが入会の条件だった、という。

その後、JR東海が2027年の開業断念を発表すると、川勝氏は「2027年のくびき(縛り)がなくなり、2037年がデッドライン(最終期限)となった。南アルプスの問題は2037年までに解決すればいい」と、2037年リニア全線開業がJR東海の目標であることを繰り返した。

「2037年開業」を繰り返した川勝前知事
筆者撮影
「2037年開業」を繰り返した川勝前知事

このため、川勝氏の発言が多方面へ誤解を招いているとして、JR東海はことし1月24日、静岡市内で異例の会見を開き、「知事発言は事実誤認に基づいている」と見解を示した。

JR東海は「静岡県知事から2037年までに品川―大阪間が全線開通の目標となったという話があったが、品川―大阪間を一括して工事を進めるというのは資金的、経営的にあるいは工事施工能力として大変難しい。

まずは品川―名古屋間を進めていく。2037年の全線開業を目指すのではない」と川勝氏の主張した「2037年全線開業論」を完全に否定した。

川勝前知事と同じ「事実誤認発言」

2016年に安倍政権で3兆円の財政投融資の借り入れが決まったあと、JR東海は2045年から8年前倒しの2037年全線開業を目標としたが、名古屋以西について、その完成年を含めて事業計画を作成しているわけではない。

品川―名古屋間の開業がいつになるのかわからない状況の中で、2037年が全線開業の目標など言えるはずもないからだ。

早期開業を目指すリニア沿線知事による「期成同盟会」の要望に応えて、岸田首相が川勝氏の主張に惑わされたかのように「2037年全線開業」を目標としてしまったのだ。

これでは、岸田首相は川勝氏と同様に「事実誤認に基づいた」発言をしたことになる。ちゃんとJR東海の説明を聞いたほうがよかった。