静岡県の鈴木康友新知事の誕生でリニア問題はどう動くのか。ジャーナリストの小林一哉さんは「JR東海の社長も昨年交代しており、お互いの顔ぶれは一新された。静岡県とJR東海の信頼構築から始めるしかないだろう」という――。
静岡県知事選での初当選から一夜明け、新聞を手にする鈴木康友氏=2024年5月27日午前、浜松市
写真提供=共同通信社
静岡県知事選での初当選から一夜明け、新聞を手にする鈴木康友氏=2024年5月27日午前、浜松市

自民党推薦候補の落選で、リニア問題の解決は遠のいた

川勝平太前知事が混乱だけを巻き起こした静岡県のリニア問題に関わる環境は、新知事の誕生によって大きく変わった。

JR東海は、元副知事で総務官僚だった自民党推薦候補が当選すれば、早期解決への道がすぐにでも開けると見ていた。

結局、JR東海の期待通りの結果にはならず、リニア問題の解決にはもうしばらくの時間が掛かることになった。

川勝氏の後継者として、静岡県の立て直しを託されたのは元民主党衆院議員で浜松市長を4期務めた鈴木康友・新知事。

5月29日就任会見の鈴木知事
筆者撮影
5月29日就任会見の鈴木知事

鈴木知事は5月29日の就任記者会見でリニア問題について「これからしっかりと全容を把握し、JR東海、国、大井川流域の市町と連携して、課題をクリアしていく。課題解決に加えて、静岡県としてのリニアに関わるメリットの部分をしっかりJR東海と交渉していく」と「リニア推進」の姿勢を見せながら、具体的なことはこれからであるという慎重な発言に終始した。

つまり、川勝氏が大風呂敷を広げたリニア問題の議論をちゃんと理解することから始めるつもりだ。

「リニア騒動」第2ラウンドの鐘が鳴る

一方、JR東海は丹羽俊介社長が2023年4月から、金子慎・現会長とバトンタッチして、リニア問題の解決に腐心する。

JR東海の丹羽社長
筆者撮影
JR東海の丹羽社長

昨年12月には、静岡工区の未着工を理由に東京・品川―名古屋間の2027年開業を「2027年以降」とした上で、ことし3月、2027年開業を正式に断念した。

丹羽社長は「1日でも早い着工に向けて、静岡県との対話を精力的に進めたい」と強調した。6月5日には早速、鈴木知事と初めて面談する予定だ。

また国は静岡工区着工に向けて、ことし2月にモニタリング会議を立ち上げた。座長に、川勝氏とも関係の深い、矢野弘典・県ふじのくにづくり支援づくりセンター理事長(産業雇用安定センター会長)が起用された。

すべて新たな顔ぶれで、静岡県の「リニア騒動」の第2ラウンドが始まることになった。

リニア問題の解決の糸口は果たして見つかるのか。