川勝平太前知事が頑なに認めてこなかった「山梨―静岡県境のボーリング調査」について、県の専門部会が一転して認める方針を示した。ジャーナリストの小林一哉さんは「川勝知事がいなくなった途端、理由も説明せずに方針を180度変えるような専門部会は即刻解体すべきだ」という――。
「川勝色」を消しにかかる静岡県
あまりにも不思議なリニア会議だった。13日の会議で、静岡県がそれまでJR東海に対しつけていた言い掛かりをすべて反故にする姿勢を見せたのだ。
静岡県の対応が180度変わった理由は、川勝平太氏が5月9日に静岡県知事を辞めたこと以外ほかにはない。川勝氏の辞職によって、静岡県の姿勢が一変してしまった。
静岡県では26日の投開票に向けて県知事選が行われている。県リニア問題責任者を務める森貴志副知事はじめリニア担当職員は、“川勝色”をすべて一掃した上で、新たな知事を迎えたいのだろう。
ただ、それならば、組織そのものを一新しなければならない。
これまでの組織のまま結論を大幅に変えるのであれば、その主張は矛盾だらけとなり、あまりにみっともない。それに気づいていないふりをしているのか、あるいは複雑怪奇となったリニア問題を理解できない新聞、テレビの記者たちをごまかせると判断したのかのいずれかである。
いったい、何があったのか?
川勝前知事は「ボーリングをやめろ」と唱え続けてきた
26日投開票となる県知事選を前に、県地質構造・水資源専門部会が13日に開かれた。
JR東海の丹羽俊介社長が5月20日からの山梨県の調査ボーリング再開を明言したことを受け、それに「待った」を掛けていた静岡県としても何らかの結論を示しておく必要があった。
だから、新知事誕生の前にもかかわらず、「リニア南アルプストンネル山梨工区 山梨・静岡県境付近の調査及び工事の計画について」をテーマとする地質構造・水資源専門部会を開催したのだ。
川勝氏は2022年冬から「山梨県内の調査ボーリングをやめろ」を唱え続けた。
「山梨県内の調査ボーリングは調査に名を借りた水抜き工事であり、JR東海が約束した工事中の湧水の全量戻しは実質破綻する」などと主張していた。