2023年の国の調査で、全国の空き家が過去最多となる900万戸あることが判明した。不動産事業プロデューサーの牧野知弘さんは「全国の空き家率ワースト5は徳島、和歌山、鹿児島、山梨、高知と地方部が目立つが、空き家数で見ると全く違う顔ぶれになる」という――。(第1回/全3回)

※本稿は、牧野知弘『新・空き家問題――2030年に向けての大変化』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。

夕暮れ時、日本東京の街並み
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空き家は「ボロボロの一軒家」だけではない

さて900万戸の空き家の内訳は、どのようになっているのでしょうか。

賃貸用空き家数は443万6000戸。全体の49.3%、およそ半数が賃貸アパートや賃貸マンションの空き住戸となっています。

空き家と言えばメディアなどではボロボロになった家やゴミ屋敷などの個人住宅を取り上げますが、それとは別に多くの賃貸住宅が空き住戸になっているのです。【図表1】

住宅着工戸数は2023年で81万9600戸ですが、そのうちの約4割、34万3900戸が貸家です。そんなに賃借需要があるのか不思議に思われるかもしれませんが、相続税対策や土地の有効利用などを目的に、今でも数多くの賃貸住宅が建設されています。

賃貸アパートなどは、築年数が新しいもののほうが商品力が高いため、古いものから空き住戸が目立つようになります。しょせん優勝劣敗のマーケットですが、需給バランスがだぶついているなかで供給だけはしっかり行なわれているのが実態です。

背景にあるのが、相続など税務対策です。