揉める相続と揉めない相続の違いは何か。不動産事業プロデューサーの牧野知弘さんは「最近は、相続しても買い手や借り手が見つからず、維持コストがかさむ“負動産”を押し付け合うケースが増えている。実家に戻った際に不動産価値をチェックし、親を含めての家族会議を開くことをお勧めする」という――。
並んだ家のうちの一つ
写真=iStock.com/Bet_Noire
※写真はイメージです

自分は住んでいない実家、どうする?

年末年始、たくさんのお土産を抱えて実家に帰省する人も多いことだろう。久しぶりに会う親や親戚、地元の友人、知人。年末年始は、常日頃は交流のない人たちと旧交を温めあう良い機会だといえよう。

年末年始に久しぶりに接するのは、人だけではない。親の家がある。以前は自分が住んでいた懐かしいはずの実家であるが、中高年ともなるとこの家で育った年数よりも、家を出てから生活している都会の家、あるいは自分の持ち家で暮らした年数のほうが長くなっている人も多いはずだ。

実家にはすでに自分の部屋はなく、なんとなくよそよそしい雰囲気ですらある。そして、親の急激な老い方に愕然とし、家も老朽化が目立ち始めていることにあらためて気づかされるものだ。

子どもたちで「押し付け合い」が発生

親が老いた先に相続は起こる。相続の発生件数は年間でどのくらいあるのだろうか。答えは簡単だ。年間の死亡者数と相続件数は同じだからだ。2022年の年間死亡者数は全国で159万人。相続と言えば税金のことばかりが話題になりがちだが、発生した相続のうち相続税を支払うことになった比率は2022年で9.6%だ。

近年は、相続税を計算する際の基礎控除額の引き下げや路線価格の上昇による不動産相続評価額の上昇などを背景に税負担を余儀なくされる人は増えているが、相続は税金の問題だけの話ではない。

たとえ税金の負担がなくとも相続人である子は、被相続人である親の残した財産を相続するかどうか、何の財産を相続人の誰が受け取るのかを決定しなければならない。遺産分割協議だ。相続が“争続”になるのがこの遺産分割だ。

かつては相続が発生すると、親の家を誰が相続するかで大揉めになった。家は一家にとって一番高価な財産だったからだ。ところが現代では「親の家は相続したくない」と相続人間で押し付けあう姿が相続争いの舞台にしばしば主役として登場するという。

では年始に当たっていささか不謹慎であるかもしれないが、相続してよい実家、避けたほうがよい実家の判断材料をこっそりお教えしよう。実家に戻る際の参考にしてほしい。