1個10円単位で商売する駄菓子店は薄利多売ビジネスの筆頭格。岡山県の小さな町にある店「日本一のだがし売場」もその例外ではない。12年前のオープン当初は1日の客が5人で売上2000円。それでも経営知識ゼロで跡を継いだ代表は「あえて経営という概念を捨て、メイン顧客である子どもの要望を聞き続け、子どもが喜ぶこと=非効率を追求していったら、結果的に売り場も自然に広がり、売上も右肩上がりになった」という――。(聞き手・文=フリーランスライター野内菜々さん)
5000種の駄菓子販売で、12期連続黒字決算
岡山県瀬戸内市ののどかな田園地帯に、年間100万人もの客が駆けつける倉庫がある。同市の人口は3万人台だが、駐車場には、いつも近隣の大阪や兵庫、愛媛、徳島からやってきた車がズラリ。
そのお目当ては、駄菓子だ。入り口には「日本一のだがし売場」の手づくり看板が掲げられ、750坪(およそ畳1500枚分)の広さにカラフルなお菓子やおもちゃが、所狭しと陳列されている。その数、約5000種。さながら駄菓子のテーマパークといったところだ。
平均客単価は3000円。子どもだけでなく、大人も文字通り“大人買い”をし、つい財布の紐がゆるむ。カゴいっぱいに買い込むすべてのひとが満足げな笑顔を浮かべて、帰路につく。
「日本一のだがし売場」を運営するのは大町(本社:岡山県瀬戸内市)。代表・秋山秀行さん(66)が2011年にスタートさせた。
たくさんの客に愛され、順風満帆に見える秋山さんの商売人生だが、ここに至るまでの道は険しかった。何度も経営危機に見舞われたという。