※本稿は、白澤卓二『Dr.白澤の実践メソッド 100寿をめざす認知症最新戦略』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
認知症の大半を占めるアルツハイマー病
原因は「炎症」「栄養不足」「毒物」
認知症の原因はたくさんあります。なかには治療すれば治るものもありますが、大半を占めるのは、加齢とともに進行するアルツハイマー病です。
アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβ(※1)は、現在もまだ生理学的意義や、その蓄積がアルツハイマー病の原因なのか結果なのかなど、詳細は解明されていません。
※1 脳でつくられるタンパクの一種。健康な人の脳にも存在していて、通常は短期間で排出される。異常なアミロイドβができると排出されず脳に蓄積し、それが出す毒素によって神経細胞が死滅する。異常なアミロイドβが集まると老人斑と呼ばれる。
ブレデセン博士は、アミロイドβは「脳を守るための防御反応」であり悪者ではないと結論づけました。
脳はさまざまな要因でダメージを受けていて、それらから脳を守ろうとしてアミロイドβが発生しています。製薬会社はアミロイドβを除去する(たまらない)薬を開発しようとしていますが、問題はアミロイドβではありません。アミロイドβがたまる要因となる、脳の神経細胞にダメージを与える根本的な要因を防ぐ必要があるのです。
ブレデセン博士は36の要因があるとしていますが、それらは複雑で難しいため、私は大きく「炎症」「栄養不足」「毒物」としました。
ブレデセン博士は、アルツハイマー病を大きく「1型(炎症性)」「2型(萎縮性)」「1.5型(糖毒性・1型と2型の混合)」「3型(毒物性)」の4つに分けています。炎症は大きな要因ですし、萎縮や糖毒には栄養が関係しています。脳にダメージを与える毒物に対しては解毒が有効です。
脳で炎症が起こったり、栄養不足に陥ったり、毒物が蓄積したりすることで、神経細胞がダメージを受け、認知機能がどんどん低下していくのですから、それらをできるだけ避けることができれば、認知機能の低下防止につながると考えられます。「炎症」「栄養不足」「毒物」への対策は特別なものではありません。ふだんの生活習慣、特に食事に気をつけること、生活環境を整えることで予防できるものが多くあります。