もうひとつ大事なことは動脈硬化予防

アルツハイマー病と並んで多いのが、血管性認知症です。

血管性認知症は、脳梗塞(※1)、脳出血(※2)、くも膜下出血(※3)など、脳の血管に障害が起こって認知機能が低下します。これらには、高血圧と動脈硬化が関係しています。実は、高血圧も動脈硬化も血管の老化です。

※1 動脈硬化で狭くなった脳の血管に血液のかたまりが詰まって血流が滞り、神経細胞が壊死してしまう。
※2 高血圧などで脳の血管が破れて出血し、周辺の神経細胞が壊死してしまう。
※3 くも膜という脳を保護する膜の血管が出血し、周辺の神経細胞が壊死してしまう。

動脈硬化は、血管壁に酸化したコレステロールが沈着して起こります。いきなり生じるのではなく、長い年月をかけて徐々に沈着していきます。

若いうちは血管を修復するシステムが優っているのですが、加齢とともにその機能は衰えます。カバーできないくらい酸化コレステロールが沈着すると、血管壁にプラークと呼ばれるコブができて血管の内腔が狭くなり、血液の流れが悪くなってしまいます。

さらに、プラークはジュクジュクとして壊れやすく、なんらかのきっかけで傷つくと血栓(血液のかたまり)となります。血栓は血液にのって全身へと運ばれ、それが血管に詰まると、脳梗塞、心筋梗塞、肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)などを引き起こします。

白澤卓二『Dr.白澤の実践メソッド 100寿をめざす認知症最新戦略』(主婦の友社)
白澤卓二『Dr.白澤の実践メソッド 100寿をめざす認知症最新戦略』(主婦の友社)

高血圧にはさまざまな要因がありますが、加齢とともに血圧は上昇していきます。これは、動脈硬化が進み、血管のしなやかさが失われてしまうためです。動脈硬化でかたく、もろくなった血管が破れやすくなるため、脳出血のリスクも高まります。高血圧にも動脈硬化が関係しています。

血管性認知症は動脈硬化(血管の老化)が原因と言っていいでしょう。その予防には、何に気をつければいいのでしょうか。

動脈硬化は血管の老化ですから、食事、運動、睡眠など生活習慣を整えることが大前提になります。これはアルツハイマー病予防と同じことです。神経細胞にダメージを与えるものは、ほかの細胞にもダメージを与えます。脳を守る生活習慣は血管の老化予防にも役立ちます。