認知症の原因は複雑…年齢や状態によって対処法が違う

認知症は高齢者の病気と思っている人がほとんどでしょう。

これは大きな間違いで、実際には40代から認知症への道はスタートしています。アミロイドβの沈着も、動脈硬化も特別なことではありません。むしろ、現代の日本人の多くがこれらを促す生活を送っています。

朝食に甘いデニッシュパンを食べ、歯磨きせずに急いで家を出て、通勤ラッシュの電車はストレス満載、日中は車で営業しながらスマホをチェックし、ランチはハンバーガー、気分転換にタバコを吸い、仕事の休憩に甘い缶コーヒーを飲み、帰宅後は唐揚げやポテトチップスをつまみにビールや缶チューハイで晩酌して、スマホを見ながら就寝……。

スペインのバー
写真=iStock.com/tella_db
※写真はイメージです

こんな生活を送っているとアミロイドβはどんどんたまっていきますし、動脈硬化も進行してしまいます。しかし、これにまったく当てはまらない人は少ないのではないでしょうか。日本人の認知症患者の増加はなるべくしてなった、そう言ってもいいでしょう。

もうひとつ大きな誤解があります。

現在の日本では、認知症の診断は「要介護であるかどうか」が基準となります。認知機能がかなり低下していても、日常生活に支障がなければ認知症ではなく「軽度認知障害(MCI)」と診断されます。

一般的には、MCI)は認知症とは違うものといわれていますが、実は「認知症の末期」を迎えていると考えたほうがいいのです。自覚症状が出ているときには、脳は甚大なダメージを受けていると考えられます。

さらに、加齢に伴って現れるもの忘れや記憶力の低下も、認知機能の低下を示すサインです。認知症とは違うと安心させるような説明がありますが、そのままの生活を続けていると、脳の機能は一気に衰えて、認知機能もどんどん低下してしまいます。

もの忘れが始まるのは、早ければ40代くらいからです。そこから20年30年かけて脳にダメージが蓄積していき、やがて、周囲の助けを借りないと生活できないくらい認知機能が落ち、さらには寝たきりになってしまいます。

そうならないためには、できるだけ早く、40代、50代から脳や血管を若々しく保つための生活を始めることが大切です。

もし、すでに認知機能の低下を感じ始めていたとしても、遅過ぎることはありません。食事や運動、睡眠を見直して実践すれば、認知機能の低下を防ぐことができますし、落ちてしまった認知機能がよくなるケースもあるのです。私は、本書(『Dr.白澤の実践メソッド 100寿をめざす認知症最新戦略』)で紹介していることを、館林の介護付き有料老人ホームで実践し、その効果を実感しています。

若くして発症する若年性認知症については、遺伝が関係しているため、日常生活の改善だけでは難しい側面もあります。ただ、サイトカインによる神経再生治療という選択肢があります。

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