JR東海に名古屋以西のことを考える余裕はない
ことし3月、JR東海は静岡工区の完成に着工から少なくとも、10年掛かることを明らかにした。
静岡工区の水資源保全、南アルプス保全や残土置き場など環境問題が解決しているわけではない。これから協議に入り、具体的な解決を目指すのである。
また、川勝氏の後任の鈴木康友知事は、「静岡県のメリットを示す」として、静岡空港新駅の設置について交渉していくことをJR東海の丹羽俊介社長に伝えている。
これら静岡県のリニア問題を解決するとなると、どんなに早くても2、3年は掛かるだろう。その後に着工することになる。
また、JR東海はことし4月になって、2025年度着工の山梨県駅に6年8カ月掛かり、完成は2031年度を見込むなど、そもそも2027年開業は困難な状況だったことを明らかにした。
未着工の静岡工区以外にも沿線では工期の遅れが目立つが、JR東海はすべての進捗状況を説明しているわけではない。
つまり、JR東海は、名古屋までの工事で手いっぱいで名古屋以西のことを考える余裕など全くないのだ。
国家予算投入なくして開業時期繰り上げは不可能
また名古屋以西でも、土地買収などを行わないで済む大深度地下の利用、すなわち地下トンネルを使うことが想定される。
トンネルを専門にする工事業者に依頼するしかないが、当然、トンネル工事専門業者にも限りがある。
現在の状況からは、早くても2037年くらいに名古屋までの開業となればいいほうだ。
そのあと、名古屋―大阪間の工事に入り、2047年以降に全線開業となるのが、妥当性は高いだろう。
JR東海の「品川―大阪間を一括して工事を進めるというのは資金的、経営的にあるいは工事施工能力として大変難しい」の説明に対して、政府がどのような対応ができるのか?
当時の安倍晋三首相の肝いりで、2016年に3兆円の財政投融資の借り入れが決まり、工期を8年間前倒しした経緯がある。
もし、3兆円の財政投融資に追加して、さらなる財政支援に踏み切るのであれば、7日の時点で、岸田首相はどのようなスキームかを説明していたはずだ。
つまり、政府による新たな財政支援などないと見るのがふつうである。おカネの手当てなしで何ができるのか不思議である。