クリーンエネルギーへの移行は、人類が気候変動に立ち向かうための解決策と考えられている。その方向性に賛同する人は多いが、太陽光発電するためのパネルの導入が思わぬトラブルを引き起こすケースもある。
スペイン人のカルラ・シモン監督は、自身の経験をもとに制作した映画『太陽と桃の歌』(12月13日公開)でこの問題を扱った。本稿では、シモン監督へインタビューをもとに、この「ソーラーパネル」の負の側面について問題提起したい。
地球を守り、雇用創出と経済成長を支えるクリーンエネルギー政策
2022年度のベルリン国際映画祭で最高賞にあたる金熊賞を受賞した『太陽と桃の歌』は、スペインの小さい村で伝統的な桃園を営む家族が、ソーラーパネルの設置により、桃園の伐採に追いやられていく物語だ。
実は、この映画はシモン監督の家族をモチーフとしており、監督が出会った農家の人々から聞いた話も反映している。フィクションといえど、スペインの田舎で起きている現実を映し出している作品だ。
この物語の背景を知るには、スペインのクリーンエネルギー政策が地域社会に及ぼしている影響について理解する必要があるだろう。日本でも似たような状況だ。
コロナ禍で大きな経済打撃を受けたスペインは、クリーンエネルギーのシフトを積極的に進めている。EUの復興基金(次世代のEU)を活用し、太陽光や風力発電を中心に再生可能エネルギーの導入拡大をしているところだ。
特に、「気候中立化」を目指す国家戦略の一環として、2050年までに電力消費の97%を再生可能エネルギーで賄う目標を掲げている。2020年には20%しかなかったグリーンエネルギーの比率を30年間でほぼ100%にしようとしているのだ。この取り組みには、雇用創出や経済成長を支える目的も含まれている。
一方で、この急速なシフトが私たちに及ぼしている影響はどのようなものか。映画では詳しく描かれていない背景を見てみよう。