静岡県内のリニア計画について、今度はトンネル工事で出る盛り土の処理問題が新たに浮上した。ジャーナリストの小林一哉さんは「JRの当初の残土処理計画が、川勝知事時代に制定された県の条例に抵触している。JRは適用除外を認めるよう県に要請しているが、県は今のところ認める予定はない」という――。
トンネル工事で発生する「要対策土」処理問題が浮上
リニア南アルプストンネル工事の静岡工区を巡り、静岡県の鈴木康友知事と大井川流域の県内10市町の首長による意見交換会が7月23日、静岡県庁で開かれた。
意見交換の場は非公開だったが、会議のあと吉田町の田村典彦町長から、トンネル工事で発生する、環境への影響が懸念される重金属を含む「要対策土」について言及があった。
「要対策土」とは、ヒ素、セレンなど自然由来の重金属が含まれ、汚染対策が必要とされる通常土ではない発生土を指す。
田村町長は「二重シートで対策を行うと聞いているが、それだけで有効かわからない。想定外のことが起きる。すべて処理施設へ持っていくべきだ」などと述べた。
JR「万全の対策で盛り土をする」
JR東海は、リニア南アルプストンネル静岡工区工事で発生する土砂を約370万立方メートルと見込んでいる。
そのうち、全体の97%、約360万立方メートルの通常の発生土を処理するために、リニアトンネル工事現場近くの大井川左岸に面した燕沢上流付近に大規模な「ツバクロ残土置き場」を建設する計画を立てている。
JR東海は、リニアトンネル工事現場から7~8キロほど下流に、約10万立方メートルを処理する「藤島残土置き場」を設置し、要対策土を永久に盛り土する計画を立てている。
鈴木知事が7月10日に藤島残土置き場を視察した際、JR東海は「二重遮水シートによる封じ込め対策を行い、重金属等が(土壌中に)漏れ出ないようにする。降雨等により、対策土へ含まれた水分は、排水設備を設け、集水設備で水質を調査した上で、排水路から大井川へ放流するなどの対策を取る」などと説明している。