川勝知事時代の「盛り土条例」に抵触

ところが、このJR東海の盛り土計画が、川勝平太前知事時代の2021年7月に発生し、28人の死者を出した熱海市の大規模な土石流災害を機に制定された「静岡県盛り土条例」(2022年7月1日施行)に抵触するのだ。

条例は、重金属など要対策土の盛り土を原則禁止している。

このため、静岡県は、現在の藤島残土置き場は、条例に適合しないために計画を見直すよう求めている。

ただし、生活環境の保全上の支障を防止するために知事が認める措置を講じた上で行う盛り土は「適用除外」とされる。

JR東海は藤島残土置き場を「適用除外」とするよう、鈴木知事の判断に期待している。

川勝前知事の時代には「適用除外」はありえなかった。

田村町長は、「スピード感を持ったリニア問題の解決を目指す」鈴木知事に対して、適用除外を認めないよう釘を刺したと見られる。

肝心の残土置き場が決まらなければ、リニアトンネル工事には入れないのだ。

JR東海は、計画見直しを求められる要対策土置き場を最重要課題として、早急に何らかの手を打たなければならない。

川勝前知事は「適用除外にならない」とバッサリ

静岡県は、ことし2月5日に発表した「今後、JR東海と対話を要する28項目」に、「藤島残土置き場」計画を盛り込んだ。

そこには「現在のJR東海の計画は条例上、認められない」とひと言あるだけである。そのひと言だけで、簡単にはいかないことがわかる。

もともとJR東海は2017年、環境影響評価手続きの中で議論を行い、土地の所有者や地元住民、静岡市の意見などに配慮した上で、藤島残土置き場計画を決めている。

川勝知事は「藤島残土置き場について、計画時にこのような厳しい条例は制定されていなかった。2022年に新たに制定された条例に書かれている通り、要対策土の盛り土は認められない。適用除外にならないこともはっきりしている」と何度も繰り返した。

森貴志副知事も2023年2月14日の国の有識者会議で、「藤島残土置き場は工事現場から離れているので適用除外の要件を満たさず、適用除外とはならない。藤島残土置き場計画を認められない」と頭から否定した。