工事場所と残土置き場の距離が遠すぎる
静岡県生活環境課によると、適用除外となるものとして、
② 土壌汚染対策法の許可を受けた汚染土壌処理施設で行う盛り土等
③ 生活環境の保全上の支障を防止するための措置として知事が適当と認めるものを講じた上で行う盛り土等
――が該当するとしている。
このうち、JR東海は、③の「生活環境の保全上の支障を防止するための措置」を万全に講じていると主張している。知事が適当と認める措置であり、適用除外としてほしいと要請している。
ところが、県はリニアトンネル工事については、別の理由で「適用除外」に当たらないとしている。
それは、リニア工事が「同一事業区域内ではない」からだ。
これはどういうことか?
他のリニア沿線の工事でも、要対策土の問題は発生している。
長野県の場合、JR東海は当初、産廃処理場の最終処分場に搬送する予定だったが、JR東海の敷地内で要対策土を利用する方針を追加している。
この場合、リニアの線路や駅舎など、全国新幹線鉄道整備法(全幹法)における同一事業区域内で利用するため、盛り土をすることに何ら問題ない。
将来にわたって、JR東海が管理、保全していくことができるからである。
「地域振興策」のトンネル工事は適用除外
ところが静岡県の場合は事情が異なる。
リニアトンネル工事現場から7~8キロ離れた藤島はJR東海が地権者から借りて、残土置き場専用とする。つまり、将来にわたって盛り土されるだけである。
全幹法によるリニア鉄道の同一事業区域内ではなく、リニア鉄道とは遠く離れているから、JR東海は管理、保全できないという解釈だ。
一方で、同じ県内でも、JR東海が掘削工事に入る県道南アルプス公園線トンネルの要対策土については、県は近く道路法による同一事業区域内の盛り土として認める方針である。
このトンネルは、静岡市にある東俣林道をJR東海がリニア工事のための専用道路として改良、使用する見返りに、JR東海が静岡市への地域振興策として140億円を全額負担して建設するものだ。
県道南アルプス公園線の「140億円トンネル建設」の残土32万立方メートルのうち、3カ所で計26万立方メートルの置き場が確保されたことから、近く、JR東海は掘削工事に入る。
自然由来の重金属が含まれる要対策土は3カ所のうち、2カ所に盛り土される計画である。
当然、適用除外となる「生活環境の保全上の支障を防止するための措置として知事が適当と認めるものを講じた上で行う」としている。