中国政府は「買うな」と指導するが…

このところ、中国内の投資資金が一斉に国債購入に向かい、国債の価格が急上昇している。それに伴い、流通利回り(金利)が大きく低下している。2024年の年初から8月23日までの間、10年の金利(長期金利)は0.4ポイント(2.56%から2.15%へ)の大幅低下となった。30年の金利も、0.48ポイント(2.83%から2.35%へ)と大きく低下した。

中国の習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委主席は2024年8月20日午後、北京の人民大会堂で第33回夏季オリンピック大会(パリ五輪)中国体育代表団全員と会見した。
写真=新華社/中国通信/時事通信フォト
中国の習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委主席は2024年8月20日午後、北京の人民大会堂で第33回夏季オリンピック大会(パリ五輪)中国体育代表団全員と会見した。

一部専門家から、不動産バブルが崩壊した後、国債以外に主な投資対象が見当たらないとの指摘もある。国債バブルが発生すると、長い目で見て金融システムが不安定化する懸念もある。

今年5月から、中国政府と中国人民銀行(中央銀行)は国債バブルの発生を抑えるため、金融機関に国債を買わないよう指導を重ねた。過度な金利の低下を抑え、金融システムの安定を保つための方策だろう。その後も、国債の流通市場で、“買うから上がる、上がるから買う”という連鎖が続いた。中国の国債バブルが起きているとの警戒感は高まった。

金利が反転上昇すれば金融不安のリスク

今後、永久に金利が一本調子で低下し続けることは考えづらい。短期的に、どこかで利食いなど売りが増えて、金利が反転上昇するリスクはある。国債の価格下落により中小の銀行経営不安が表面化すると、中国の金融システムの不安定感が高まることもある。そのリスクは過小評価できない。

8月21日、中国の国債流通市場で10年物国債の流通利回りは2.125%に低下する場面があった(価格は上昇)した。8月5日につけた2000年以降の最低水準(2.099%)に迫った。

主要国の長期金利の推移と比較しても、中国の金利低下は鮮明だ。年初から8月23日まで、米国の長期金利は0.08ポイント低下の3.80%だった。利下げが始まったカナダの長期金利も、米国と同じ程度の低下幅だった。ユーロ加盟国では、財政の悪化懸念からフランスなどの長期金利は上昇した。利上げなど異次元緩和の修正が進み、わが国の長期金利は上昇した。