中国国内の消費が減速し、中国経済が失速している。大和総研経済調査部長の齋藤尚登さんは「若者の失業率が高止まりし、不動産不況が続いて節約志向が続いている。政府はクルマやエアコンに補助金を出して消費の活性化を図ろうとしているが、これは未来の消費の前借に過ぎない」という――。
赤い矢印に人民元のお金が入った買い物かご
写真=iStock.com/Tomas Ragina
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伸び悩む中国国内の消費

中国の消費が冴えない。

国家統計局によると、2024年4~6月の実質GDP成長率は前年同期比4.7%(以下、変化率は前年同期比、前年比)となり、1~3月の5.3%から減速した(以下、中国国内統計の出所は注釈のない限り国家統計局)。成長率を押し下げたのが消費であり、小売売上高は1~3月の4.7%増から4~6月は2.6%増に伸び率が大きく低下した。

中国の消費減速の背景には、いくつかの構造的要因がある。

1つ目は中国の発展度合いがそこそこに上がったことであり、これ自体はネガティブな話ではない。

個人的な話で恐縮だが、筆者が北京駐在を始めた2003年当時、「中国の経済規模は日本の3分の1程度で、人口は日本の10倍であり、1人当たりでは日本の30分の1程度にすぎない、だからまだまだ中国経済は成長が続く」などと説明をしていた。それが、駐在を終え、日本に帰国した2010年に中国の経済規模が日本を追い越し、世界第2位の経済大国となった。

2023年時点では、中国の経済規模は日本の4.2倍、1人当たりで見ても日本の4割強となった。2023年の中国の1人当たりGDPは1万2631ドルとなり、世界銀行が定義する高所得国の1万3845ドルまであと一歩に迫っている(ただし、為替の元安ドル高の影響、さらには足元のデフレ傾向もあり、2021年以降は1万2600ドル台で足踏みが続いている)。

どんな農村部にもテレビや冷蔵庫が普及し尽くした

こうした中、かつては都市と農村で耐久消費財の普及に大きな格差があり、特に農村の新規需要によって消費が大きく押し上げられる時代があったが、それも終焉を迎えた。

耐久消費財の普及状況を見ると、2000年時点では都市と農村の普及格差は極めて大きかったが、これが急速に縮小していき、2020年になると洗濯機やテレビ、冷蔵庫など多くの白物家電で普及格差がほぼなくなった。新規需要が一巡した後は更新需要が期待できるにとどまるため、もはや消費の高成長は望むべくもない。