今後の中国の消費に期待はできない
国家統計局が発表する消費者信頼感指数(楽観と悲観の境目=100)は上海市でロックダウンが実施された2022年4月に急低下した。2023年1月の「ウィズコロナ」政策への転換後は、消費者信頼感指数も回復すると思われたが、一時的かつ小幅な改善にとどまり、その後は低空飛行が続いている。2024年6月は86.2ptにとどまった。
ちなみに、同指数が急低下した2022年4月は新築住宅価格が下落に転じた時期と一致しており、上記家計のバランスシート調整が、消費者信頼感指数の低迷に影響している可能性は極めて高い。不動産不況からの脱却は容易ではなく、影響が長期化する懸念がある。
以上をまとめると、当面は、自動車・家電購入刺激策の効果発現が期待できるが、それは一過性のものであり、中長期的に中国の消費に多くを期待することは難しいということだ。
インバウンド消費は「円安」に支えられていただけ
最後に、日本経済との関連では、中国人旅行者によるインバウンド消費に期待がかかるところである。
日本の観光庁「インバウンド消費動向調査」によると、2024年6月までの過去1年間の訪日中国人の旅行消費額は2019年比26.1%減とコロナ禍前を回復していない。これは中国人旅行者数が戻っていないことが主因であり、1人当たりの旅行消費額は35.6%増となっている。「買物代」に限ってみれば、中国人全体は2019年比37.5%減、1人当たりでは14.4%増だ。
ただし、同期間の人民元・円レートが39.5%の円安になっていることからすると、1人当たりで見ても元ベースの旅行消費額や買物代はむしろ減少している。中国人の購買力は低下しているが、円安の効果がそれを補っている格好だ。
今後、ややぎくしゃくしている日中関係が改善していけば、訪日中国人旅行者数は一段と回復する可能性が高い。円安効果がフルには反映されないにしても1人当たりの旅行消費額も堅調な推移が期待される。日本のインバウンド消費には増加余地が大きく残されているということだ。この点で、足元で急速に進んだ円高はインバウンド消費の増加に水を差しかねないだけに、注意が必要だろう。