プロフェッショナルは稼げなくなる

生成AIの進化が、急速に進んでいる。「ChatGPT」の登場で、社会が求める人材像が劇的に変わっている。この変化に対応できない人や企業、そして国は淘汰されていく。

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日本企業では、日立製作所は6月、投資家向け説明会で2027年をめどに生成AIのスペシャリストを5万人規模で育成する計画を発表した。以前にも、自社で生成AI人材育成に取り組む企業はあったが、生成AIをメインに、これだけ大規模な人材育成計画を打ち出した日本企業は日立が初めて。今後追随する企業も出てくるだろう。

ただ、その中身が肝心であり、生成AI人材育成に着手しても、もしプロンプトエンジニアの創出を想定しているなら認識が遅れている。生成AI時代に活躍するのは、エンジニアのようなプロフェッショナルではないからだ。

社会が求める人材は時代によって変化する。18世紀の産業革命で、世界は農業社会から工業化社会に突入。工業化社会が求めたものは、決められたことを正確に行えるブルーカラーや、機械や工場の設計ができるエンジニアだった。日本はこの時代に適応して経済成長し、世界第2の工業大国になった。

しかし1980〜90年代に本格的に到来した第3の波――情報化社会――に乗り遅れてしまった。情報化社会では、製品を作ったり売ったりする直接業務より、バックオフィスの間接業務がものをいう。間接業務をIT化して生産性を高めるにはSOP(StandardOperating Procedures)、つまり業務プロセスの標準化が不可欠だ。

知識や情報が価値を生む情報化社会で重宝されたのは、専門知識が求められる仕事だった。たとえば弁護士や会計士、医師、コンサルタント、エンジニアなどのプロフェッショナルである。

私がマッキンゼーに入社した72年は、誰も戦略コンサルタントという職業を知らなかったが、退職した90年代にはマッキンゼーが東大法学部の就職人気ランキングでトップ10に入り、近年でも高学歴の学生に人気の高い会社になっている。これも情報化社会で、戦略の専門家の持つ知識や思考法が重宝された結果だ。この20〜30年は、まさにプロフェッショナルの時代だった。