破綻寸前の皆保険は大胆な改革を

日本の健康保険制度が危機に瀕している。誰でも医療を受けられる国民皆保険制度は、日本が世界に誇れる素晴らしい仕組みだからこそ、大胆にメスを入れて維持すべきである。

聴診器と電卓と領収書
写真=iStock.com/LittleCityLifestylePhotography
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日本では、大企業の従業員らが入る組合健保、中小企業の従業員らが入る協会けんぽ、それら職域保険の対象外の人が入る国民健康保険など、国民は必ずどこかの公的医療保険に入る仕組みになっている。

どの保険も財政は厳しい。健康保険組合連合会が今年5月に発表した2024年度予算見通しによると、組合健保は全国約1400組合のうち約9割近くにあたる1194組合が赤字。全体の赤字額は6578億円に達する。

保険料で支える現役世代の数が減り、高齢者が増えて医療費が膨らんでいるのだから、赤字になるのは当然である。保険制度全体で見ると、2020年度の医療費40.2兆円のうち、患者の自己負担額は14.5%で、保険から給付されたのは52.5%。残りの33.0%は、国や地方公共団体が負担しており、税金による補填にも限界がある。このまま医療費が膨らめば、国民皆保険制度は早晩、破綻するだろう。

破綻するといっても、国民皆保険制度自体がなくなるわけではない。イギリスは日本と同じく国民皆保険であるNHS(ナショナル・ヘルス・サービス)という仕組みを運営しているが、診察を受けるのに病院で5〜6時間待つのは当たり前、手術も数週間待ち。誰でも必要なときに必要な医療が受けられてこそ国民皆保険といえるが、その意味でNHSは完全に失敗事例である。日本も何も手を打たなければイギリスと同じ状態になる。