住まいやお金など家族を守るための完璧な防御法はあるか。仕事や職場の揉め事に遭遇したときの対処法とは。よもやのトラブルから身を守るために法律の知恵を味方につけよう。
名刺交換
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会社を辞めるとき「名刺」は返却するべきか

会社を辞めることになり、デスクを整理していると出てきたのが、これまで交換した顧客の名刺。持ち帰っていいのでしょうか?

就業規則の運用細則のうえで、本人の名刺は制服やパソコンと同様、会社が従業員に備品として貸与したものであり、退職時には返却を求められることが大半です。退職後、その会社の名刺を使う根拠はなくなりますから、会社から支給された自分の名刺なら、基本的には返却しなければなりません。

では、顧客の名刺はどうなのでしょう。中古トラックを売買する競合他社に転職した従業員が、退職する前に自分が交換した相手の名刺データを入手していたことがわかり、その名刺データが「営業秘密」に当たるかどうか争われた裁判があります。判決は「営業秘密に該当しない」でした(東京地裁、令和2年10月28日)。その会社ではデータへのアクセス制限が設けられておらず「秘密管理性」に乏しかったことと、そもそも名刺は第三者に手交するもので「非公知性」が認められないとされたことが、判決の主な理由です。この判決に照らしてみると、このような場合は顧客の名刺は持って帰ってもOKになるでしょう。