「格差」というテーマに正面から取り組んだベストセラー

地味な経済学の研究書――。フランスの経済学者、トマ・ピケティが2013年に発表した『21世紀の資本』に対して、それが最初に抱いた印象でした。にもかかわらず、この著作は発表直後から話題を集め、研究書としては異例の世界的なベストセラーになったのです。なぜそれほどの注目を集めたのか、振り返ってみましょう。

1980年代から2000年代にかけて、経済学やメディアの多くは、格差という問題をやや軽視していたきらいがあります。とくに90年代から続いたアメリカ経済の持続的な発展の中で、人々の関心はもっぱら「成長」のほうに集まり、「格差」についての議論は古い話題という感覚がありました。