地方衰退の原因を少子化に求めるな

地方の人口減少が止まらない。残念ながら、この流れは変わらない。それを前提に、ピンチをチャンスに変える発想が必要だ。

民間の有識者グループ「人口戦略会議」は、今年4月、2050年までに消滅する可能性のある市区町村を公表した。人口戦略会議は、国立社会保障・人口問題研究所の推計をもとに、20〜30代女性の減少率を市区町村ごとに分析。人口が減り、最終的に消滅する可能性がある市区町村が744あるという。

実は14年にも日本創成会議が同様の分析にもとづいて消滅可能性のある市区町村を公表している。10年前の消滅可能性都市数は896。それに比べて152減っている。

とはいえ、依然として全体の約4割に当たる市区町村が消滅の危機にあり、特に深刻な東北地方は、市区町村215のうち165、割合で言えば77%の市区町村が消滅可能性自治体とされた。

しかし私自身、これらの報道に驚きはない。人が都市に移動して地方が衰退するのは世界的な現象であり、今、世界を見回しても大都市以外で繁栄しているところはない。

背景にあるのは、ネーションステイトからリージョンステイト、つまり国民国家から地域国家へのシフトだ(注1)。これまで人々の暮らしの豊かさは国単位で決まっていた。もちろん都市と地方に格差はあるが、ネーションステイトは再配分を行って格差をできるだけ小さくする働きを持ち、繁栄を競い合うのはあくまでも国家間だった。

しかし、国境を越えるボーダレス経済時代に突入すると、国という単位が瓦解がかいして、いくつかの都市がまとまったリージョン単位で豊かさを追い求めるようになった。

シアトルの街並み
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わかりやすいのは、北米のカスカディアである。カスカディアは北米北西部のカスケード山脈でつながったメガリージョンで、カナダ・ブリティッシュコロンビア州のバンクーバー、アメリカ・ワシントン州のシアトル、その南にあるオレゴン州のポートランドといった大都市で構成されている。

カスカディアの人々は「ワシントンくそくらえ」で、地理的にアメリカ、ヨーロッパ、アジアという世界3大市場の中間地点にあることからも、自分たちが北米どころか世界の中心だというメンタリティーを持っている。

(注1)詳細は著書『地域国家論』(講談社)参照。