日本の避難所が劣悪すぎる

4月3日午前7時58分(日本時間午前8時58分)、台湾の東部沖を震源とするマグニチュード7.2の地震が発生した。震源に近い台湾東部の花蓮県で震度6強の揺れを観測したものの、被災後の行政の動きは迅速だった。元日に発生した能登半島地震の爪痕にいまだ苦しむ日本とは、危機対応力に大きな差があることが浮き彫りになった。

象徴的なのは避難所の開設である。能登半島地震で震度6弱以上を観測した石川県の7市町には、265カ所の指定避難所開設が地域防災計画によって定められていた。しかし、そのうち開設できたのは7割弱で、指定避難所を利用できない住民は近所の集会所などに自主避難せざるをえなかった。指定避難所も中身はお粗末で、段ボールベッドが整備されたのは数週間後。住民は雑魚寝を余儀なくされた。

一方、台湾では、被害の大きかった花蓮市で地震発生から2〜4時間後に避難所が開設された。避難所にはプライバシーに配慮したテントが並び、温水シャワーや無料Wi-Fiが提供されたという。

台湾で地震発生後、小学校に設置された避難所(花蓮市)。
台湾で地震発生後、小学校に設置された避難所(花蓮市)。

能登半島地震と台湾東部地震では規模や被災状況が異なる。しかし、それを差し引いても、日本と台湾ではスピードや質に大きな隔たりがあった。

なぜ台湾は迅速な対応ができたのか。まず、行政や民間の役割が明確であることが大きい。たとえば人命救助は県、避難民のサポートは市の役割と事前に決まっているから、今回も指揮命令系統に混乱がなく、各役所がスムーズに行動に移れた。

役割が決まっているのは民間も同じである。避難所のテントの一部は民間の慈善団体が用意したものだが、慈善団体はテントを寄付するだけでなく、設置も含めて避難訓練に参加。役割が決まっているから、地震発生時は行政の指示を待つことなく動けたのだ。

それに対して、日本は地方公共団体の役割が明確ではない。日本は県や市町村のほか、政令指定都市や区もあり複雑だ。重層構造になれば役割や責任の所在も曖昧になりやすい。

行政組織内がそうなのだから、民間との役割分担はなおのことできていない。地震発生後に、石川県はボランティアが来ることを控えるよう呼びかけた。地震が起きてから慌てて受け入れ体制を整えているようでは遅いのだ。

台湾の震災対応が迅速だった理由がもう一つある。台湾はコミュニケーションがスマホベースで、行政のデジタル化が進んでいるのだ。

新型コロナのパンデミックが始まったときも、「デジタル担当大臣」のオードリー・タン氏が、不足するマスクに関する在庫情報のアプリを3日で開発・公開して、日本で話題になったとおりだ。

日本のデジタル大臣は、IT起業家との“会食”経験が豊富というだけの人や、X(旧Twitter)のフォロワーが多いというだけの人がデジタル大臣を務めるくらいだから、日台で行政の質とスピードに差がつくのは当然だ。