時価総額でアップルを上回り世界2位に

6月5日、米エヌビディアの株価は1224ドル40セントで取引を終了した。同社の時価総額は3兆118億ドル(1ドル=155円で約467兆円)となり、アップルの3兆34億ドルを上回りマイクロソフトに次ぐ世界第2位になった。20年前の株価は1ドル前後だったことを考えると、直近の株価は1200倍超に高騰している。

フアンCEO AI特需で業績急拡大
写真=ロイター/共同通信
エヌビディアのフアンCEO=2024年6月2日、台北

株価の推移を見る限り、世界経済の牽引役がスマホからAIへシフトしていることがわかる。AIは多くのデータを解析することで、一定の原因と結果を推論する。その推論によって、将来起きることや人々の望むものをある程度の精度で予測することが可能になる。それは、社会や経済の変化をより精緻に解析するに大きな福音となる。その意味では、AIの機能は革命的な進化といえる。

そのAIには、演算処理能力の高い先進の半導体が必要だ。その半導体を供給するのがエヌビディアだ。同社は、高速演算を支える“画像処理半導体(GPU)”市場で独走状態にある。さらに同社はGPUなどの開発を強化し、より汎用型の人工的な知能、それを社会に実装するロボットなどにつなげようとしている。

“スマホ誕生”以上のインパクトが訪れる

今後、高い成長機会を求め、多くの企業がAI分野に参入するだろう。それに伴い競争は激化する。エヌビディアのAIチップを上回る半導体の開発を目指し、米AMDやインテル、スタートアップ企業もチップ開発を強化している。電力需要の増加で小型モジュール炉(SMR)や、夢の発電技術と呼ばれる“核融合発電”の開発競争も激化し始めた。

スマホはSNSなどの新しいビジネスを生み出し、リーマンショック後の世界経済の成長を支えた。AIのインパクトはそれを上回るだろう。インフレ懸念、地政学リスクなど世界経済の不安定性が高まる中、競争に優位に対応しAI関連分野の産業を振興できるか、主要国経済の成長にかなりの影響があることは間違いない。