新型コロナの「第11波」で感染者が急増している。一方、一部の医師や学識者が懸念しているのが、多くの国民が接種したコロナワクチンによる健康被害だ。この問題について中心的役割を果たしてきた京都大学の福島雅典名誉教授を、ノンフィクションライターの窪田順生さんが取材した――。
ワクチン接種
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ワクチンで健康被害が出ても仕方ない?

7月22日、実業家の堀江貴文氏が6回目の新型コロナワクチン接種を受けたことをXで報告した。

感染者が増加している中で、厚労省が「有効性や安全性が確認された」としている新型コロナワクチンを求める堀江氏のような人は少なくない。

その一方で、今年1月28日までの厚労省への報告をみると、ワクチン接種後の全健康被害報告数は3万7793件。そのうち重篤報告が9282件、死亡者数は計2159人(※1)、そのうち「予防接種健康被害救済制度」による死亡被害認定は、なんと618件(2024年6月10日現在)にものぼっている(※2)、という事実もある。

※1 厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会第101回(2024年4月15日開催)までのデータをワクチン問題研究会が集計
※2 疾病・障害認定審査会審議結果(2024年6月10日)より

これだけ死亡者を国が認めているにもかかわらず、なぜ人々はワクチンを求めるのかというと「副反応とはそういうもの」という認識が広まっているからだ。ワクチンは安全なものだけれど、どうしてもごく稀に「健康被害」や「死者」が出てしまうものだと多くの国民は受け入れているのだ。しかし、そんな風潮に強い憤りを示している1人の医師・科学者がいる。

薬害防止の専門家が政府に検証を求めている

「こういう報道を受けて“ワクチンの有害事象は副作用ではなく副反応と呼びます”とか“接種後に亡くなった人はたまたま副反応が重い人”なんて説明している人もいるけれど、これはまったくデタラメ。こんな嘘を流布したのは誰なんだと憤りがこみ上げてきます。」

そう怒りをあらわにするのは、福島雅典・京都大学名誉教授である。

京都大学名誉教授の福島雅典さん
筆者撮影
京都大学名誉教授の福島雅典さん

教授は、2000年に日本の大学院で初めて設立された薬剤疫学分野教室の初代教授として、副作用の事例研究を進めて、薬害防止の科学を確立してきた。

2003年からはアカデミアにおける画期的な医薬品や医療機器の開発を行うトランスレーショナルリサーチセンターをわが国で初めて軌道に乗せ、さらに主要大学に拠点形成を支援・指導するなど、半生をかけて、医療の科学的基盤の構築整備に取り組み、神経、鼓膜、角膜等の再生医療の承認・市販を世界に先駆けて導いた。御年75歳。誰もが認める日本医療の発展に大きく貢献してきた人物だ。

その一方で、実は「コロナワクチン推進」が大多数を占める医療界において、コロナワクチン接種による健康被害の問題を訴え続けて、政府にワクチン接種の情報公開、検証を求めてきた中心人物としても知られている。