プロ野球選手は、どんな生活をしているのか。ノンフィクションライターの長谷川晶一さんによる『プロ野球アウトロー列伝 異端の男たち』(大洋図書)より、「プロ野球ニュース」(フジテレビ系)の名物キャスターだった佐々木信也さんへのインタビューの一部を紹介する――。

「プロ野球ニュース」名物キャスターが見た名選手

プロ野球の世界に関わるようになって、すでに60年以上が経過した。あの王貞治も張本勲でさえも、佐々木からすれば後輩にあたる。人脈、知識、経験は余人をもって代えがたい存在となった。

現役時代の巨人の王貞治選手の一本足打法
写真=時事通信フォト
現役時代の巨人の王貞治選手の一本足打法

「球界の酒豪ナンバーワンは王貞治。シーズン中にもかかわらずボトル1本どころか、2本は平気で呑んで、翌日の試合に平然と出ていましたからね」佐々木の述懐は続く。

「あれは確かよみうりカントリーだったと思うけど、評論家でジャイアンツOBの青田昇さんと一緒になったんです。その青田さんがものすごく酒臭かった。それで私が“昨日は相当呑んだんですか?”と尋ねると、“昨日はワンちゃんと一緒だったんだけど、かなり呑んでね”と笑っている。詳しく話を聞くと、“オレはウイスキーのボトル1本ぐらいは呑んだけど、ワンちゃんは2本空けていたよ”と笑っていました。で、その翌日の夜には試合に出てホームランを打つんだから、さすがですよ」

「酒」に続いて「博打」について尋ねると、佐々木は即答する。

球界ナンバーワンギャンブラー

「球界ナンバーワンギャンブラーは張本勲かな? あるとき、背広の内ポケットいっぱいの札束を見せてもらったことがあったなぁ。“佐々木さん、コレ見てよ。競馬で勝ったんだ”って言ってたね。でも、張本の場合は博打もそうだけどケンカがめっぽう強かった」

あるとき、銀座でド派手なケンカがあったという。たまたま佐々木の友人が、その光景を目撃していた。

「大の男がぶん投げられて宙を舞っているぐらいの大ゲンカ。私の友人が人だかりの中に入ってよく見ると、輪の中心で大暴れしていたのは東映フライヤーズ時代の張本だったそうです。当時から、“張本を怒らせるな”という言葉は聞いていたけど、やっぱり本当にケンカは強かったんだね。銀座のど真ん中で、大の男を何人もぶん投げるなんて、今の時代では絶対に考えられない話ですよ(笑)」

では、「球界ナンバーワンの好色家は?」と尋ねると佐々木は笑う。「たくさんいますけど、本人の名誉のためにここは黙っておきましょう(笑)」